- Address
- 305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1 [アクセス]
外部併任先
- 東京理科大学 創域理工学部 先端化学科
- 法政大学 生命科学部 環境応用化学科
研究内容
- Keywords
腐食防食,大気腐食,鉄鋼材料,水素脆化
出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。
公開特許出願
所属学会
日本鉄鋼協会, 表面技術協会, 腐食防食学会, Electrochemical Society, 電気化学会, 金属学会, 原子力学会
構造材料研究センター
ハイパースペクトル解析による鋼構造物の腐食リスク予測
ハイパースペクトルイメージング, 炭素鋼, 大気腐食, 腐食生成物, SAM解析, 腐食リスク予測
概要
鋼構造物の予防保全には、現在の腐食状態に加え、その後の腐食進行を評価する技術が重要である。本研究では、千葉県銚子と沖縄県宮古島で最長2.5年間、直接および遮蔽暴露した炭素鋼を対象に、ハイパースペクトル測定とSAM解析により表面の腐食生成物を識別した。α-FeOOH、β-FeOOH、γ-FeOOH、Fe₃O₄の参照スペクトルを用い、各生成物の分布と表面存在割合を評価した。γ-FeOOHとFe₃O₄については、表面存在割合と腐食変化量に相関が見られなかったが、直接暴露では主にγ-FeOOH、遮蔽暴露では主にFe₃O₄が検出されており、さらされていた環境の違いを判別できることがわかった。一方、表面存在割合とその後1年間の腐食増加量を比較した結果、α-FeOOHには正の相関、β-FeOOHには負の相関が認められた。さびの光学情報を腐食リスク評価に活用できる可能性を示した。
新規性・独創性
● さびの識別に基づく腐食リスク評価
● ハイパースペクトルから異なる腐食生成物の分布と割合を評価
● 異なる屋外環境での適用性を検証
● 将来の腐食進行につながる指標を提示
内容
千葉県銚子と沖縄県宮古島で1.5年間、直接および遮蔽暴露した炭素鋼表面をハイパースペクトルカメラで測定し、SAM解析によって腐食生成物の分布を可視化した。測定では400~1100nmの反射スペクトルを取得し、既知の4種類の腐食生成物の参照スペクトルを用いて、500nmと760nmの2波長における類似度から各腐食生成物を識別した。図1では、α-FeOOHを青、β-FeOOHを黄、γ-FeOOHを赤、Fe₃O₄を灰色で示す。両試験場とも、直接暴露ではγ-FeOOH、遮蔽暴露ではFe₃O₄が主に検出され、腐食環境による表面のさびの違いを捉えることができた。Fe₃O₄の検出は、湿潤状態が長く続く環境との関連を示唆する。各色の画素数から表面存在割合を求め、目視では区別しにくい腐食生成物の分布と割合を評価した。
次に、各腐食生成物の表面存在割合と、その後1年間の腐食増加量との関係を調べた(図2)。腐食増加量は、例えば0.5年暴露と1.5年暴露の試験片の腐食減量の差から求め、比較期間を1年間とすることで季節の影響を抑えた。γ-FeOOHとFe₃O₄には明瞭な相関がなかった一方、α-FeOOHの表面存在割合は腐食増加量と正の相関、β-FeOOHでは負の相関を示した。これらの結果は、表面のα-FeOOHとβ-FeOOHの存在割合が、その後の腐食進行を評価する指標となり得ることを示している。今後は、混合さびの識別精度を高めて表面存在割合の定量性を検証するとともに、適用環境を広げ、腐食生成物とその後の腐食進行との関係を明らかにする必要がある。
まとめ
ハイパースペクトル測定とSAM解析により、屋外暴露した炭素鋼表面の腐食生成物を識別し、その分布と表面存在割合を評価した。α-FeOOHとβ-FeOOHの表面存在割合は、その後1年間の腐食増加量とそれぞれ正・負の相関を示した。表面のさびの光学情報を、鋼構造物の腐食リスク評価と予防保全に活用できる可能性を示した。



