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研究内容

Keywords

biomimetics, adhesion, interconnection

所属学会

日本接着学会, 日本工学アカデミー, エレクトロニクス実装学会, BIOKON, COST Action

構造材料研究センター
タイトル

バイオミメティクスによる可逆的インターコネクション

キーワード

バイオミメティクス,接着,剥離,生物,昆虫

概要

これまでの大量生産・消費型ものづくりは、資源の枯渇化問題や、大量廃棄物による環境破壊をもたらし、持続的発展を阻む要因となっており、リサイクル・リユースを基調としたものづくりが求められている。分離・解体技術は持続可能社会のコア技術と言える。従来の接合・接着技術は強い接合強度を求められて開発される場合が多く、解体時の分解が困難である。一方で、循環型ものづくりに優れた自然界には接着と剥離を迅速に行う仕組みが存在している。本研究は、生物が発達させた接着・剥離の原理解明と生物の形成プロセスを取り入れた発生生物学的バイオミメティクスによる新しい接着・剥離技術の開発を目指している。

新規性・独創性

落葉をモデルにした接着・剥離技術の開発。電子配線基盤から非加熱で簡単にチップを取り外す技術開発に成功。
発生生物学的バイオミメティクスによる新しい接着・剥離技術の開発。キイロショウジョウバエのサナギをモデルに低エネルギーで簡単にヘラ状の接着機構を製作することに成功。
生物の接着・剥離の原理解明。テントウムシの接着歩行の主たる原因が分子間力であることを証明した。
陸上で生息するハムシやテントウムシが水中を歩行できることを世界で初めて発見し、泡を利用した水中接着機構を開発した。ぬれた環境でも滑らない昆虫の接着剥離の原理を災害対策ロボットへ応用。

内容

image

図1 (a)キイロショウジョウバエの脚先(赤丸部分)。(b)脚先の拡大(電子顕微鏡写真)。赤丸部分が「ハエ型」(脚裏のヘラ状接着性剛毛)の接着構造。 (c )人工的に製作した「ハエ型」(脚裏のヘラ状接着性剛毛)の接着構造をガラス板に接着させた様子。 (d)一本のみでシリコンウエハー(52.8g, 直径20.3cm)を持ち上げる様子。赤丸は接着部。

これまでのヤモリをモデルとしたバイオミメティック可逆接着は、生物の「形」を模倣するもので、複雑な微小構造を製作するためにMEMS(半導体製品製造技術)などが利用され高い生産コストが課題となっていた。一方で、生物(昆虫)は室温で少ないエネルギー消費で形成している。生物の「形」だけでなく、生物自身の「作り方」を模倣する新しい『発生生物学的バイオミメティクス』を開発した。ショウジョウバエは、図1(b)のように脚裏に接着性剛毛があり、シンプルなヘラの形状をしている。ヘラ状の接着性剛毛は、①剛毛形成細胞の伸長と細胞骨格性アクチン繊維により「へら状の骨組みを形成」した後、②クチクラの分泌により「固化」して形成するという、単純な形成プロセスであることから、この形成プロセスをもとに、①ナイロン繊維の引き上げ(ヘラ構造の形成)と②固化という2ステップのみの単純な製作プロセスが設計し、ハエ型と同等の接着構造を室温で製作できることを示した。ハエ型の接着構造は、昆虫の脱着機構と同様に、力をかける方向により強い接着力を示したり、簡単に分離させたりできる脱着効果が確認された。図1(d)はわずか1本で、52.8 gのシリコンウエハを持ち上げている写真である。これは、756本(9 cm2)で60 kgの人間がぶら下がれる強度に匹敵する。サナギをモデルにすることで単純なプロセスで製作することができ、生産コスト・製造エネルギーの低減が図れるため、環境低負荷技術としての普及が期待される。

まとめ

本研究は、生物が発達させた接着・剥離の原理解明と生物の形成プロセスを取り入れた発生生物学的バイオミメティクスによる新しい接着・剥離技術の開発を行い、低環境負荷技術として発展させた。バイオミメティクスによるモノづくりを国際標準化として原案作りから発行まで行った。(ISO 18457 Biomimetics — Biomimetic materials, structures and components)

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