SAMURAI - NIMS Researchers Database

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研究内容

出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。

口頭発表
    その他の文献
      構造材料研究センター
      タイトル

      スパッタ成膜中のFePt-Cナノ薄膜のミクロ組織形成機構のフェーズフィールド法による解明

      キーワード

      フェーズフィールド法, FePt-Cナノ薄膜, 熱アシスト磁気記録(HAMR), 弾性ひずみエネルギー

      概要

      人工知能(AI)技術の進展に伴うデータ量の急増により、データセンターの電力消費の増大が深刻な課題となっている。ハードディスクドライブ(HDD)の単位記憶容量あたりの電力効率を向上させる鍵を握るのが、熱アシスト磁気記録(HAMR)媒体に用いられるL10-FePtナノ薄膜である。本研究では、MgO基板上へのスパッタ成膜中にFePt-Cナノ薄膜に生じるミクロ組織の形成過程をフェーズフィールド法によってシミュレーションし、実験結果との比較検証を通じて、均一で孤立した島状組織の形成を支配する弾性ひずみエネルギー、C粒界材の役割、ならびにスパッタ速度の影響を明らかにした。

      新規性・独創性

      • スパッタ成膜中の連続的な原子供給を扱ったFePt-Cナノ薄膜のフェーズフィールドモデルを開発
      • 弾性ひずみエネルギーの緩和が、HDDとしての利用に不可欠な島状組織を形成する機構を解明
      • C粒界材の存在が原子の拡散経路・距離を変化させ、FePt粒の縦方向成長を促進するメカニズムを特定
      • スパッタ速度と拡散速度の相対的なバランスが最終的なミクロ組織を決定することを定量的に解明

      内容

      image

      上図は、本研究で構築したフェーズフィールドモデルによるFePt-Cナノ薄膜のミクロ組織形成シミュレーションの概要を示す。左上は実験で作製したFePt-C膜のTEM像であり、これを参考にシミュレーションで用いるパラメータを決定した。右上は3次元シミュレーション結果(赤:L10-FePt、青:C、緑:MgO)であり、実験と同等の孤立した島状組織が再現されている。下段は膜断面((010)面)における応力場分布(σ11、青:圧縮、赤:引張)を示す。
       
       
      FePtとMgOの格子ミスフィットにより、FePt粒内には10 GPaを超える大きな引張応力が生じる。FePt粒はこの歪みエネルギーの解放を優先するため縦方向へ成長しやすくなる。一方、FePt粒から離れたMgO表面にも引張応力が発生するため、新たなFePt/MgO界面の形成は弾性的に不利となり、隣接粒同士の合体が抑制される。この二つの効果が相まって、均一で孤立した島状組織が形成されることが明らかになった。さらに、C粒界材を添加すると、スパッタにより供給されたFe・Pt原子がC表面上で捕捉され、FePt粒上部までの拡散距離が短縮されるため、縦方向成長が一層促進され、FePt粒の微細化が促進される。これらの知見から、高記録密度HDD向けFePt-C膜の実用的な設計指針として、(1)十分な格子ミスフィットを保ちつつエピタキシャル成長が可能な基板の選択、(2)FePtおよび基板と界面整合性を示さない粒界材の選定、(3)粒の合体を招かない最大のスパッタ速度での成膜、が導出された。

      まとめ

      スパッタ成膜過程における原子供給を明示的に扱ったフェーズフィールドモデルを構築し、FePt-Cナノ薄膜のミクロ組織形成を実験結果と定性的・定量的に一致する形で再現した。弾性ひずみエネルギー、C粒界材による拡散経路の変換効果、スパッタ速度の三つが島状組織の形成を決定づける重要な因子であることが解明された。これらの結果は高記録密度・高電力効率のHDD実現に向けたFePt磁性記録膜の材料選択と成膜プロセス設計の明確な指針となる。

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