SAMURAI - NIMS Researchers Database

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研究内容

Keywords

スピントロニクス、磁性材料、第一原理計算

出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。

口頭発表

所属学会

応用物理学会, 日本磁気学会, 日本物理学会

受賞履歴

  • 応用物理学会優秀論文賞 (2019)
  • 日本磁気学会学術奨励賞(内山賞) (2018)
磁性・スピントロニクス材料研究センター
タイトル

磁気機能デバイスに対する理論研究

キーワード

スピントロニクス,磁性材料,トンネル磁気抵抗効果,第一原理計算,有効モデル計算

概要

磁気トンネル接合(MTJ)は強磁性体/絶縁体/強磁性体の3層構造からなる代表的な磁気機能デバイスであり、これまでに磁気センサや磁気メモリなどに応用されてきた。MTJではトンネル磁気抵抗(TMR)効果が生じ、この効果の性能指数であるTMR比を向上させることが応用上大変重要である。NIMSでは長年にわたりこのようなTMR効果についての実験研究がなされてきたが、我々はこの現象に対する理論研究を進めている。最近の研究により、非従来型の配向性を持つMTJで新たな機構によって高いTMR比が発現しうることがわかった。またTMR比が温度上昇と共に急低下する点も実用化に際しての課題とされているが、この現象の物理的起源についても重要な知見が得られた。

新規性・独創性

従来とは異なる新規配向性の磁気抵抗素子の有用性を実証
新規な発現機構による磁気抵抗効果を提唱
磁気抵抗効果の温度依存性の新規物理機構を提唱
磁気抵抗素子の有限温度特性を向上させる材料探索指針を提案

内容

image

MTJを磁気メモリ(MRAM)に応用する際、高いTMR比に加え大きな垂直磁気異方性(PMA)が必要とされる。従来のFe/MgO/Fe(001) MTJではFeのバルクのバンド構造が高いTMR比を与え、FeとOによる界面電子状態がPMAをもたらすことが示されてきた。しかし更なるTMR比、PMAの向上に向けて、新たなMTJを探索することが重要である。我々はfcc構造を持つCoNi、CoPtなどのL11強磁性合金に着目し、これらの合金とMgOからなる新規(111)配向MTJを検討した。第一原理計算に基づく解析の結果、L11強磁性合金からの大きなPMAに加え、界面電子状態の共鳴トンネルに由来する巨大TMR比が得られた(上図参照)。この結果は(111)配向MTJの有用性を示すものであり、新機構による高TMR比の実現という学術的新規性も有している。
またMTJの応用に際しては、室温で高いTMR比を達成する必要がある。しかし多くのMTJでは温度上昇に伴いTMR比が急低下することが知られており、その起源の解明およびこの現象を抑制するための指針の提案が急務とされてきた。我々はFe/MgO/Fe(001) MTJに対する有効理論モデルを構築し、TMR比の温度依存性を解析した。このモデルの特徴は、磁性を担うd電子と電気伝導を担うs電子の間の界面s−d交換相互作用を考慮した点にある(下図参照)。解析の結果、急激なTMR比の減少が再現された。これはすなわち、TMR比の温度依存性を小さくするためには界面s−d交換相互作用が小さいMTJを探索することが重要であることを示している。この研究は長年の課題であったTMR比の温度依存性に対し、新たな物理描像の提案と今後の研究指針を与えるものである。

まとめ

新規構造を有するMTJの有用性を実証し、有限温度下でのTMR比減少の物理機構も明らかにした。我々の提案を受け、新規(111)配向MTJに対する実験研究がNIMSで開始されている。今後はより実験的に取り組みやすい物質系の提案、及び実験結果を解釈するための解析が重要となる。また有限温度下でのTMR比向上に向けて、今回見出した指針に基づいた物質依存性の解析が必要となる。

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