SAMURAI - NIMS Researchers Database

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研究内容

所属学会

溶接学会, 日本機械学会, 日本金属学会

構造材料研究センター
タイトル

溶接技術の高度化に向けたAI技術の活用

キーワード

溶接,鉄鋼材料,機械学習,溶接Digital Transformation

概要

アーク溶接技術は、アークプラズマにより溶接金属と母材を溶融し、一体化する技術あり、安価で高速な接合方法として広く活用されている。しかし、アーク溶接技術には、溶接中の温度履歴により、材質や力学状態が変化し、構造物特性を損なう可能性があるという課題がある。上記課題の解決のために、人工知能(AI)技術や機械学習技術の活用により溶接部設計や施工を脱技能化、高信頼性化する技術の開発を進めている。これまでに、溶接部特性予測モデリング手法や、3D金属組織像からの組織抽出手法、溶接解析のための入熱モデル決定手法の開発を行ってきた。以上の研究により、新規知見の創出のみならず、産業活用の観点からの技術開発も目指している。

新規性・独創性

アーク溶接現象は、固相、液相、気相、プラズマの4つの相が数cm程度の範囲で干渉し合うため、非常に複雑であり。現象を理解する難易度は非常に高い。
AI・機械学習技術を駆使し、数値データに限定されない「何か」から「何か」への変換を可能にするモデル構築を行うことで、新たな視点からアーク溶接現象を理解することを目指している。
アーク溶接現象を正確にモデリングする技術によって、従来は職人や技術者の経験に頼っていた溶接部の設計や施工を脱技能化し、高信頼性化することが可能になる。

内容

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溶接部特性予測モデリング手法の開発では、LSRF5法(Least Squares-assisted Rule Extraction from Facts Method Version 5)を提案した。この手法は、構造を工夫したニューラルネットワーク(RF5法)と最小二乗近似を組み合わせており、入力と出力(予測対象である溶接部特性)の関係を明確にする特性予測式を構築できる。構築モデルを活用することで、溶接部の設計や施工において、短時間かつ高い信頼性で、技能に依らず溶接部特性を予測することが可能になる(上図は突合せ継手の疲労特性予測モデル構築例)。
3D組織像からの組織抽出手法の開発では、複雑な鉄鋼材料の3D組織像から単一の組織を抽出するため、改良GrowCut法を提案した。この手法は、セルオートマトン法をベースにしたセグメンテーション手法であるGrowCut法を発展させたもので、高精度な組織抽出が可能になる(上図はマルテンサイトラスの3D形状抽出例)。
溶接解析のための溶接入熱特性決定手法の開発では、溶接試験から得られる温度履歴や溶融部形状情報から畳み込みニューラルネットワークにより特徴抽出し、適切な溶接入熱特性を決定する手法を提案した。これにより、従来は、解析技術者が経験に頼っていた溶接現象を正確に再現するための溶接入熱特性の決定を自動化でき、溶接シミュレーションの脱技能化が達成される(上図は溶接入熱特性決定フローの概要)。
以上の研究を発展・応用することにより、様々な情報を得るためのAI・センシング技術と技術者の協働による溶接Digital Transformationの実現を目指している。

まとめ

AI・機械学習技術は近年急速に発展しており、その流れは今後もしばらく続くと考えられる。溶接現象の学術的な理解、産業活用可能な技術の開発に向けて、今後も最先端のAI・機械学習技術を取り入れ、精力的な研究を実施する。

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