外部併任先
- 芝浦工業大学 客員教授
研究内容
- Keywords
三次元積層造形、溶射、耐環境コーティング、マイクロフォーカスX線CT
◎ AMプロセスの最適化および、AMに適した新規耐熱材料の開発
三次元積層造形(Additive Manufacturing, AM)プロセスとして、レーザおよび電子ビームを用いたパウダーベッド法を対象にした研究開発に取り組んでいる。熱源(レーザや電子ビーム)の出力やスキャン速度、ピッチ幅などが材料組織や欠陥分布に与える影響、さらに力学特性に与える影響について調査し、ターゲット材料に対するプロセス最適化を図っている。Ni基合金(ハステロイX、Inconel 738LC)やチタン合金(Ti-6Al-4V)はじめ、様々な材料系を対象として研究しており、プロセス研究を主として今後も幅広く多様な材料へと展開していく予定である。
また、AM技術はものづくりに大きな革新を起こすと期待されているが、従来プロセスのために開発してきた材料をそのままAMに適用すると、凝固割れや延性低下割れなどの問題が生じる。このため、AMプロセスに最適化された新しい材料の開発が重要である。Ni基合金を対象にAMに適した新規合金開発に取り組んでいる。
◎ AMプロセスのマルチフィジックスシミュレーション技術の開発
AMでは複雑形状部材を金型を利用することなく製造することができるが、形状に依存した抜熱挙動の違いにより、部位毎に組織が変化し力学特性も変わる。この結果、部位によっては欠陥密度が高くなる、あるいは臨界サイズ以上の欠陥が形成されるといった問題が生じ得る。これを抑制するためには、AMプロセス中の温度場を予測し、それに基づいた結晶組織や欠陥予測、特性予測技術の確立が重要である。また、レーザにしろ電子ビームにしろ形成される溶融プールの性状が組織や欠陥形成を支配する。このため、様々なプロセス条件、造形体形状を考慮した上で、組織や欠陥を予測することが求められ、このために数値シミュレーションやデータ科学を活用した技術開発を行っている。
出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。
論文
- Masahiro Kusano, Yusuke Takata, Atsushi Yumoto, Makoto Watanabe. Effects of time per layer and part geometry on thermal history and microcracking in the fabrication of nickel superalloy samples by laser powder bed fusion. Additive Manufacturing. 80 (2024) 103987 10.1016/j.addma.2024.103987 Open Access
- Masahiro Kusano, Makoto Watanabe. Controlling heat accumulation through changing time per layer in laser powder bed fusion of nickel-based superalloy. Journal of Manufacturing Processes. 131 (2024) 187-198 10.1016/j.jmapro.2024.09.001 Open Access
- Tomonori Kitashima, Takanobu Hiroto, Makoto Watanabe. Numerical analysis of Al2O3 and TiO2 growth and oxygen dissolution in a metal substrate during the isothermal oxidation of an α-Ti alloy at 973 K. Journal of Materials Research and Technology. 30 (2024) 4137-4146 10.1016/j.jmrt.2024.04.164 Open Access
会議録
- Masahiro Kusano, Hideki Hatano, Kanae Oguchi, Hisashi Yamawaki, Makoto Watanabe, Manabu Enoki. Mid-IR laser ultrasonic testing for fiber reinforced plastics. AIP Conference Proceedings. (2018) 10.1063/1.5031634
口頭発表
- 伊藤 海太, 小梶 莉菜子, 草野 正大, 白岩 隆行, 渡邊 誠, 榎 学. SLM法による造型プロセス中の微小欠陥発生のAEモニタリング. 日本金属学会 2021年春期(第168回)講演大会 https://confit.atlas.jp/guide/event/jim2021spring/top. 2021
- BULGAREVICH Dmitry, Yusuke Akamine, Talara Miezel, Mag-usara Valynn, Hideaki Kitahara, Hiroyuki Kato, Masaki Shiihara, Tani Masahiko, WATANABE Makoto. Development of Terahertz Magneto-Optic Imaging for Metal Nondestructive Testing. The 8th International Workshop on Far-Infrared Technologies 2021 (IW-FIRT 2021) / http://fir.u-fukui.ac.jp/IWFIRT/IWFIRT2021/index.html. 2021
- 北野 萌一, 辻井 正和, 草野 正大, 渡邊 誠. 選択的レーザ溶融法におけるNi 基合金凝固割れ予測手法と造形パラメータ適正化手法の検討. 第243回溶接冶金研究委員会. 2021
その他の文献
- 渡邊 誠. SIPにおけるマテリアルズインテグレーション技術の三次元積層造形プロセスへの展開. Welding Technology. (2020) 59-64
- Makoto Watanabe. サーメット溶射コーティング技術の動向. 月刊 トライボロジー. (2019) 36-39
- 草野正大, 山脇寿, 渡邊誠. 超音波伝播可視化によるCFRP板の剥離検査. 超音波TECHNO. (2018) 21-25
公開特許出願
- 3D造形用レーザ光吸収率測定装置および方法 (2024)
- ニッケル基超合金、ニッケル基超合金粉末および造形体の製造方法 (2024)
- サーメット皮膜形成方法とそれにより得られたサーメット被覆部材 (2008)
所属学会
日本金属学会, 日本溶射学会, 日本非破壊検査協会, Minerals,Metals & Materials Society, 日本鉄鋼協会
受賞履歴
- 日本鉄鋼協会 白石記念賞 (2024)
- 日本非破壊検査協会 学術奨励賞 (2017)
- Outstanding Review Paper 2011, Journal of Thermal Spray Technology (2012)
- Best Paper Award 2010, Journal of Thermal Spray Technology (2011)
- Best Reviewer Award 2010, 高温学会誌 (2011)
- Certificate of Merit, International Thermal Spray Conference 2008 (2008)
- 日本溶射協会 奨励賞 (2008)
- Best Paper Awards, International Thermal Spray Conference 2007 (2007)
- Certificate of Merit, International Thermal Spray Conference 2006 (2006)
- Best Oral Presentation Awards, Asian Thermal Spray Conference 2006 (2006)
- Best Paper Awards 2000, Science and Technology of Advanced Materials (2001)
構造材料研究センター
マテリアルズインテグレーション(MI)による3D積層造形に適した新材料の開発
3D積層造形,金属材料,耐熱材料,マテリアルズインテグレーション,DX,数値シミュレーション
概要
従来技術では困難な複雑構造体を製造できる3D積層造形プロセスは、革新的な材料プロセスとして大きな注目を集めている。しかし、既存材料をそのまま適用した場合には、造形中の欠陥の発生や微視組織の違いにより、期待される特性が得られないという課題がある。また、一つの部材製造でも部位形状に依存して熱履歴が変化し、欠陥や組織状態のばらつきが生じる。このため、3D造形に適した新しい材料開発、形状を考慮したプロセス最適化技術の確立が必要である。そこで、数値解析やデータ科学を活用したマテリアルズインテグレーション技術による組織や特性の予測技術を開発し、3D造形に適した新規材料の実現やプロセス最適化の高効率化に取り組んでいる。
新規性・独創性
● レーザ3D造形プロセスを対象とした、溶融凝固挙動、凝固組織予測、応力場予測など様々な数値解析技術の開発
● MI(数値解析とデータ科学)の活用による新合金の探索・試作・検証
● 一つの造形体内で組成を傾斜させる造形技術の開発、ハイスループット合金探索への展開
● 材料設計、粉末試作、造形試験、評価、フィードバックまで、一気通貫した研究開発による、AMのための新材料開発の加速
内容
粉末床へのレーザ走査に対して、流体解析に基づく溶融凝固挙動の数値シミューレションを開発した。さらにマルチフェーズフィールド(MPF)法と連成した凝固組織予測技術を実現した。MPF計算結果、あるいは実験観察データに基づき、PC内で微視組織を再構築し、結晶塑性解析により局所的な応力-ひずみ特性を予測するモデルを開発した。また、熱力学計算などによるデータセット構築とMI技術を組み合わせ、造形中のき裂発生を抑制可能な新規Ni基超合金の設計を行った。粉末試作を行い造形試験を行ったところ、ベースとした商用合金と比較し、劇的にき裂発生を抑制することに成功した。MIによるAMに適した新材料開発の加速が期待できる。
まとめ
● レーザ3D造形プロセスの様々な数値シミュレーション技術を開発した。
● MI(数値解析とデータ科学)の活用により、造形中のき裂発生を抑制可能な新規Ni基超合金の開発に成功した。
● 3D造形に適した新規材料の開発と、形状を考慮したプロセス最適化技術の高度化を進めていく。