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研究内容
出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。
論文
- Yasuhiro NAMURA, Yasuki UCHIDA, Ryoichi SATO, Noriyoshi SHIMIZU, Mitsuru MOTOYOSHI, Yusuke TSUTSUMI, Takao HANAWA, Takayuki YONEYAMA. Changes in surface properties of dental alloys with atmospheric plasma irradiation. Dental Materials Journal. 39 [3] (2020) 375-380 10.4012/dmj.2019-023 Open Access
- Tomoyo Manaka, Yusuke Tsutsumi, Yukyo Takada, Peng Chen, Maki Ashida, Kotaro Doi, Hideki Katayama, Takao Hanawa. Galvanic Corrosion among Ti–6Al–4V ELI Alloy, Co–Cr–Mo Alloy, 316L-Type Stainless Steel, and Zr–1Mo Alloy for Orthopedic Implants. MATERIALS TRANSACTIONS. 64 [1] (2023) MT-MLA2022001 10.2320/matertrans.mt-mla2022001
- 堤 祐介, Masaya SHIMABUKURO, Harumi TSUTSUMI, Takao HANAWA. 抗菌性を自在に制御するインプラント材料表面の創成. 電気化学. 89 [4] (2021) 346-352 10.5796/denkikagaku.21-fe0032
書籍
- 塙 隆夫, 堤 祐介. Additive Manufacturingステンレス鋼の腐食挙動. デジタル化時代のAdditive Manufacturingの基礎と応用【第2版】. リブロ社, 2023, 5.
- 永井 亜希子, TSUTSUMI, Yusuke, 野崎 浩佑. Surface Modification with Micro-arc Oxidation. Springer Nature Singapore Pte Ltd, 2019
- TSUTSUMI, Yusuke. Chemical Properties of Bio-medical Materials. Springer Nature Singapore Pte Ltd, 2019
口頭発表
- TSUTSUMI, Yusuke, M. Shimabukuro, T. Manaka, M. Goto, KADOWAKI, Mariko, KATAYAMA, Hideki, M. Kawashita, T. Ishimoto, T. Hanawa. IMPROVEMENT OF CORROSION RESISTANCE AND BIOSAFETY FOR MARTENSITIC STAINLESS STEEL BY LASER THERMAL PROCESSING. Biomaterials International 2024. 2024
- 高橋 俊太朗, 堤 祐介, 片山 英樹, 板垣 昌幸, 四反田 功, 渡辺 日香里. 固体高分子形燃料電池用バイポーラプレートの腐食評価法の検討. 材料と環境2024. 2024
- 堤 祐介, 塙 隆夫. レーザ熱加工処理によるマルテンサイト系ステンレス鋼の耐食性改善. 日本歯科理工学会第82回学術講演会. 2024
所属学会
日本金属学会, 腐食防食学会, 日本歯科理工学会, 表面技術協会, 日本バイオマテリアル学会
構造材料研究センター
革新的表面改質技術によるステンレス鋼の超高耐食性化
ステンレス鋼,耐食性,表面処理,電気化学,腐食防食,レーザプロセス
概要
ステンレス鋼は鉄系の耐食材料であり、構造材料や医療用材料といった産業用だけでなく、多種多様な日用品にも使用されており、我々の生活においても身近な存在である。ステンレス鋼は「腐食しない」と認識されがちだが、実際には介在物と呼ばれる不純物の微粒子が原因で、特定箇所が集中的に腐食する。このため、耐食性向上の効果がある元素を添加・増量することで腐食を抑制することができるが、その分コストは上昇してしまう。また、介在物を排除しているわけではないため、完全な防食には至っていない。そこで本研究では、安価な手法にてステンレス鋼の介在物を除去・無害化することで、ステンレス鋼の成分を変えることなく高耐食性化する技術を開発している。
新規性・独創性
● ステンレス鋼の腐食発生のメカニズムに基づいた、効率的な耐食性向上のプロセス原理
● レーザ照射による局所的な溶解と超急速冷却による介在物形成の抑制、および電気化学的処理による腐食発生リスクの高い介在物の優先的除去
● ステンレス鋼のポテンシャルを最大限発揮させることで信頼性化と用途拡大を実現
内容
未処理のステンレス鋼には製造プロセス中に形成した介在物が多数含まれるため、表面には必ず介在物が露出する。このなかでも、腐食誘発性の介在物は、ステンレス鋼の保護性の皮膜(不働態膜)の形成を阻害し、集中的な腐食の起点となる。本研究ではレーザ粉末床溶融結合法やレーザ熱加工法により、これらの介在物をほとんど含まないステンレス鋼表面への改質が可能であること、また、市販のステンレス鋼表面においても、特殊な電気化学処理を施すことで、腐食誘発性の介在物のみを選択的に除去できることを示した。実際に、これらのプロセスや表面処理を施したステンレス鋼は加温した塩酸においても腐食しないなど、耐食性が飛躍的に向上することを見出している。これらの成果は、燃料電池の過酷な腐食環境における材料コストの低減や長寿命化、医療用材料の高安全性化、高信頼性化に資する技術として期待される。
まとめ
レーザを利用したステンレス鋼中の介在物形成を抑制する技術、および電気化学処理によるステンレス鋼表面の介在物を除去する技術により、ステンレス鋼の耐食性を飛躍的に向上できることを実証した。従来の防食技術はステンレス素地の溶解を抑制する、不働態皮膜を強固にするなど、疾病の治療で例えると対症療法であったのに対して、本技術は腐食の直接的な原因を排除する、原因療法に相当する。介在物という足枷により、本来の性能を発揮できていなかったステンレス鋼は、適切な追加処理により、そのポテンシャルを最大限に発揮できるようになると確信している。