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研究内容

Keywords

構造・機能材料

所属学会

日本金属学会, 日本鉄鋼協会, 日本建築学会

構造材料研究センター
タイトル

耐疲労γ/ε二相合金による構造物の長寿命化

キーワード

高Mnオーステナイト鋼,低サイクル疲労,εマルテンサイト,制振構造

概要

首都直下地震や南海トラフ地震が数十年以内に発生することが予想され、その対策技術の構築は喫緊の課題である。建物の耐震補強手法について鋼材ダンパーは低コストな制振技術として現在広く普及している。一方、最近では長時間長周期地震動の問題が注目を集めている。長時間長周期地震動においては多数回の大変形を生じ、従来の鋼材ダンパーでは十分な耐久性が確保できない懸念がある。すなわち、鋼材ダンパーを長時間長周期地震動への対策技術として完成させるためには、低サイクル疲労の克服が大きな課題である。この問題に対し、高Mnオーステナイト鋼の特異な変形機構に着目し、金属疲労に対する耐久性を大幅に向上させた新材料開発に取り組んでいる。

新規性・独創性

FCC(面心立方)構造のγオーステナイトからHCP(稠密六方)構造のεマルテンサイトへの相転移を合金開発のキーメカニズムとして活用。
γ/ε二相組織による様々な機能・力学特性の改善可能性を探求・実証。
繰返し変形下でのγ/ε二相組織の革新的な疲労耐久性改善効果を発見。
γ/ε二相組織による疲労耐久性を制振ダンパー鋼材の成分設計に活用。
複数回の大地震に繰返し耐える耐疲労鋼材ダンパーの実現。

内容

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高Mnオーステナイト鋼を中心に3d遷移金属元素、卑金属・半金属元素、侵入型元素といった添加元素が相安定性や原子-欠陥相互作用に与える影響を検証し、その制御を試みている。特に塑性変形メカニズムと疲労耐久性の関係を系統的に調査し、γ/ε二相組織が疲労耐久性改善に効果的であることを示した。開発鋼Fe-15Mn-10Cr-8Ni-4Siは塑性変形メカニズムとして可逆的なγ/ε変態を生じるように設計された鋼材であり、疲労寿命が従来鋼材の10倍以上に及ぶ極めて優れた疲労耐久性を示す。同鋼材は複数回の巨大地震に耐える耐疲労制振ダンパーとして社会実装されており、今後より一層の利用普及が期待される。

まとめ

塑性変形メカニズムと疲労耐久性の関係を解明し、γ/ε二相組織の活用により耐疲労鋼材が開発できた。
開発鋼材は鋼材ダンパーとして実用化されているが、疲労が問題となる鋼構造に広く活用が期待される。
元素機能の精査を進め用途に応じた合金設計と高精度な性能予測指針の確立を目指す。

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