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NIMS Awardシンポジウム2026

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研究内容

出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。

口頭発表
    その他の文献
      磁性・スピントロニクス材料研究センター
      タイトル

      超高速・テラヘルツスピンダイナミクスを活用した磁性材料開発と新たなテラヘルツ技術の開拓

      キーワード

      テラヘルツギャップ (THz gap), 超高速スピンダイナミクス, テラヘルツスピントロニクス, フェムト秒レーザー, 磁化ダイナミクス, 時間分解分光, TRMOKE, 磁気ダンピング, 超高速スピン輸送, 全光学的磁化反転, 磁気記録, FePt, HAMR

      概要

      磁性材料における磁化歳差運動やスピン輸送は、MHz帯からTHz帯に及ぶ幅広い時間・周波数領域で生じます。しかし、特にテラヘルツギャップ(THz gap)と呼ばれる100 GHzから10 THzの周波数領域では、従来の電気的な計測手法でこれらの現象にアクセスすることが技術的に困難です。本研究では、この領域の超高速スピン現象を開拓するため、フェムト秒レーザーを用いた光学的な励起・計測・制御に取り組んでいます。また、この技術を磁性材料開発に活用しています。これまでの磁性材料開発では、磁化、保磁力、磁気異方性、磁気抵抗などの静的特性が主要な評価指標であり、デバイス性能を左右する高速の磁化・スピンダイナミクスは技術的困難さから材料開発・設計に十分活用されてきませんでした。 本研究では、時間分解磁気光学カー効果(TRMOKE)によって磁化ダイナミクスを観測し、磁気ダンピングや交換スティフネスなどの動的物性を材料パラメータとして定量評価しています。さらに、フェムト秒レーザーで生成した超高速スピン流をTHz波へ変換するスピントロニクスTHzエミッタの研究を通じ、スピン輸送の理解とTHz波発生・制御技術を開拓しています。また、全光学的磁化反転(all-optical magnetization switching)を、光による超高速磁化制御と実用磁性材料への展開を目指す研究課題として位置付けています。 時間分解分光によって得られる「時間軸」の材料情報、すなわち超高速な磁化・スピンダイナミクスとその動的物性を新たな材料設計指針へと発展させ、次世代磁気記録材料の開発と、磁性材料を用いた新しいテラヘルツ技術、光磁気記録技術の創出につなげることを目指しています。

      新規性・独創性

      本研究の独創性は、THz gapを含む技術的にアクセスが難しい周波数領域のスピン現象にフェムト秒レーザーで迫り、その「時間軸」の情報を材料科学と結び付ける点にあります。超短パルスレーザーを用いた研究が超高速現象の観測や機構解明を主な目的として発展してきたのに対し、本研究では、磁気ダンピングや交換スティフネス、超高速スピン輸送などを定量化し、組成、結晶構造、ナノ構造、界面、温度との関係を明らかにすることで、動的特性を材料設計に利用できる情報へ発展させることを目指しています。また、テラヘルツ時間領域分光(THz-TDS)を用いて、磁性薄膜からのTHz波放射やTHz帯の電気伝導度を評価し、超高速スピン流の生成・輸送・変換を材料特性と関連付けて理解する研究を進めています。さらに、TRMOKEやTHz-TDSによって得られた磁化ダイナミクスや超高速スピン輸送の知見を材料設計に活用し、全光学的磁化反転の高効率化と実用磁性材料への展開を目指しています。

      内容

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      超高速磁化ダイナミクスを磁気記録材料の設計へ 熱アシスト磁気記録(HAMR)では、記録媒体の磁化を瞬間的にレーザー加熱した状態で反転させるため、磁気異方性や保磁力だけでなく、磁化がどのような時間スケールで応答・緩和するかという動的磁気特性が重要になります。特に磁気記録媒体として用いられるL10-FePtは大きな垂直磁気異方性を有し、その磁化歳差運動は100 GHzを超えるため、従来のマイクロ波を用いた強磁性共鳴法による動的物性評価が困難でした。そこで本研究では、フェムト秒レーザーを用いた時間分解磁気光学カー効果(TRMOKE)により、FePtの超高速磁化ダイナミクスを直接観測し、磁気ダンピングなどの動的物性を材料パラメータとして定量化する研究を進めています。 研究対象は、基礎的な連続FePt薄膜から、実際のHAMR媒体に近いナノグラニュラーFePtへと展開しています。さらに、実際の記録過程では媒体が高温まで加熱されることに着目し、高温TRMOKE測定のためのNIMS独自のセットアップを開発しました。これにより、高温加熱時における動的磁気特性を実験的に評価し、磁化反転過程を理解するための材料情報として扱うことが可能になりました。 さらに現在は、動的磁気特性の評価に加え、材料の微細構造や元素添加による磁気ダンピングの制御に取り組んでいます。L10-FePtでは、これまでダンピング定数の制御手法が十分に確立されていませんでしたが、微細ナノ構造の制御によってダンピング定数を大幅に低減できることを示しました。さらに、希土類元素の添加によって高温でのダンピング定数を増大できることも明らかにしました。 このように本研究では、超高速磁化ダイナミクスの観測 → 動的物性の定量化→ 動的物性を考慮した材料設計へと研究を展開しています。従来の磁化、保磁力、磁気異方性などに加えて、磁気ダンピングをはじめとする動的な磁気特性がスピンデバイスや磁気記録性能にどのような役割を果たすのかを明らかにし、次世代磁気記録材料の新たな設計指針へと発展させることを目指しています。
      超高速スピン輸送とテラヘルツ波放射素子開発 フェムト秒レーザーによって磁性金属薄膜に生成される超高速スピン流は、非磁性重金属層において発現する、逆スピンホール効果と呼ばれるスピン-電荷変換現象を介してTHz波を大気中へ放射します。この現象は新しいTHz光源として注目されており、その高効率化には超高速スピン流の生成・輸送とTHz帯の電磁応答を材料物性の観点から理解することが重要です。本研究では、磁性材料の電子状態や輸送特性に着目し、材料設計による高効率なスピントロニクスTHzエミッタの開発を進めています。 これまでCoFeB系の磁性薄膜において、組成や熱処理によるTHz放射特性の変化を調べ、Δバンドのスピン分極、電気抵抗率、電子の平均自由行程が重要な材料パラメータであることを明らかにしてきました。THz放射の高効率化には高い電気抵抗率が有利ですが、一般に電気抵抗率の増大は電子の平均自由行程の低減を伴うため、強磁性金属層における超高速スピン輸送との間にトレードオフが生じます。 そこで、電子のスピンが片方だけに大きく偏極している、高いスピン分極率を有するハーフメタル材料に着目し、ホイスラー合金Co₂MnSiを用いたTHzエミッタの研究へと展開しました。その結果、Co₂MnSi/Ptでは結晶規則度の向上とともにTHz放射強度が増大し、CoFe/Ptを上回る放射強度が得られることを示しました。 本研究では、超高速スピン輸送とTHz波放射を支配する材料パラメータを明らかにし、電子状態、組成、結晶構造、界面の制御によって高効率なTHz波の発生・制御技術へと発展させることを目指しています。さらに、THz-TDSを活用して新材料のスピン輸送特性評価や、瞬間的なスピン流制御など、新たな材料研究にも取り組んでいます。

      まとめ

      本研究では、フェムト秒レーザーを用いた時間分解分光技術により、従来アクセスが難しかった超高速スピン現象を材料科学の観点から研究してきました。磁化ダイナミクスや超高速スピン輸送を定量的に評価し、これらを材料の組成、微細構造、界面などと関連付けることで、磁性材料の動的な特性を理解し、材料設計へと展開してきました。 今後は、超高速スピン現象を「測る」ことから「理解し、材料設計へ反映し、さらに制御する」研究へ発展させます。金属磁性薄膜におけるスピンを介した新たな光機能性を実現し、テラヘルツ技術や光電融合技術の創出を目指します。また、フェムト秒レーザーを用いた時間分解分光技術と、これまでに培われてきた超高速現象に関する基礎物理の知見を、幅広い材料研究に活用できるよう発展させていきたいと考えています。
      この機能は所内限定です。
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