研究内容
出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。
論文
- Kazuho Okada, Akinobu Shibata, Yuuji Kimura, Masatake Yamaguchi, Ken-ichi Ebihara, Nobuhiro Tsuji. Effect of carbon segregation at prior austenite grain boundary on hydrogen-related crack propagation behavior in 3Mn-0.2C martensitic steels. Acta Materialia. 280 (2024) 120288 10.1016/j.actamat.2024.120288 Open Access
- Kazuho Okada, Akinobu Shibata, Hisashi Matsumiya, Nobuhiro Tsuji. Origin of Serrated Markings on the Hydrogen Related Quasi-cleavage Fracture in Low-carbon Steel with Ferrite Microstructure. ISIJ International. 62 [10] (2022) ISIJINT-2022-212 10.2355/isijinternational.isijint-2022-212 Open Access
- Akinobu Shibata, Ivan Gutierrez-Urrutia, Akiko Nakamura, Taku Moronaga, Kazuho Okada, Yazid Madi, Jacques Besson, Toru Hara. Local crack arrestability and deformation microstructure evolution of hydrogen-related fracture in martensitic steel. Corrosion Science. 233 (2024) 112092 10.1016/j.corsci.2024.112092 Open Access
口頭発表
- 伊東 達矢, OGAWA, Yuhei, Gong Wu, Mao Wenqi, 川崎 卓郎, OKADA, Kazuho, SHIBATA, Akinobu, Harjo Stefanus. In situ neutron diffraction analysis of the deformation mechanism in hydrogen-charged Fe-24Cr-19Ni-based austenitic stainless steel. The 24th European Conference on Fracture (ECF2024). 2024
- 岡田 和歩, 柴田 曉伸, 津﨑 兼彰. 予疲労変形を用いた1.6 GPa 級焼入れままマルテンサイト鋼の疲労限度向上. 日本鉄鋼協会2024春季講演大会. 2024
- 岡田 和歩, 柴田 曉伸, 松宮 久, 辻 伸泰. フェライト鋼の水素脆性擬へき開破壊機構. 日本鉄鋼協会2024春季講演大会. 2024 招待講演
その他の文献
- OKADA, Kazuho, SHIBATA, Akinobu, Wu Gong, 辻伸泰. Effect of Hydrogen on Evolution of Deformation Microstructure in 2Mn-0.1C Ferritic Steel. MLF Annual Report 2022. 2 (2024) 7-9 Open Access
所属学会
日本鉄鋼協会, 日本金属学会, 日本機械学会
受賞履歴
- 日本鉄鋼協会・澤村論文賞 (2024)
- 京都大学・吉田研究奨励賞 (2021)
外部資金獲得履歴
- 日本鉄鋼協会 第33回 鉄鋼研究振興助成「冷間加工によるパーライト鋼の水素環境下疲労特性の向上に関する検討」 (2024)
- 科研費・若手研究「マルテンサイト鋼の強度と耐水素脆化特性の相関の局所変形挙動に基づいた理解 」 (2023)
- JST・戦略的創造研究推進事業(ACT-X)「予疲労変形を用いたき裂発生抑制による高強度鋼の疲労限度向上機構の解明 」 (2023)
- 池谷科学技術振興財団・単年度研究助成「焼入れままマルテンサイト鋼を用いた強度と耐水素脆化特性の相関の局所変形挙動に基づいた理解 」 (2023)
- 日本学術振興会特別研究員 (DC1)「中性子線回折や透過電子顕微鏡を用いたBCC鉄の水素脆性破壊のミクロ機構の解明 」 (2019)
構造材料研究センター
鉄鋼材料の水素脆性機構解明と耐水素脆性材料開発
鉄鋼材料,水素脆性破壊,転位,粒界偏析,不均一変形挙動
概要
近年、燃費向上を目的とした輸送機器の車体重量軽量化が急務となっており、出来る限り高強度な構造用金属材料を幅広く社会実装することが求められている。材料中に水素が侵入することで材料が脆くなる水素脆化現象は、引張強度上昇とともに顕著になるため、高強度鋼の実用化において大きな障害である。しかし、水素脆性破壊のメカニズムには不明な点が多い。本研究では、水素が変形・破壊挙動に及ぼす影響を「転位」「粒界偏析」「不均一変形挙動」の観点から調べ、水素脆性破壊のメカニズムを明らかにする.これにより、破壊メカニズムを抑制し材料強度と耐水素脆化特性のトレードオフ関係を打ち破るための鉄鋼材料設計指針を確立することを目的とする。
新規性・独創性
● マルテンサイト鋼とフェライト鋼を比較することで、BCC鋼の本質的水素脆性破壊機構を解明
● SEMによる3次元像構築・FIB・TEMを組み合わせ、破面の微視的な結晶学を3次元的に明らかにする手法を確立
● 炭素の粒界偏析による水素脆化の抑制をマルテンサイト鋼で実証
内容
左図は、フェライト鋼の変形微視組織発達を中性子回折によって調べ、水素によって刃状転位とらせん転位の存在比率が変化することを実証した例である。さらに、中央図に示すように、透過電子顕微鏡によって転位組織の形態も変化することを発見した。これらの結果から、水素がらせん転位の刃状転位に対する相対的易動度を増加させることを明らかにしている。さらに、SEMによる3次元像構築・FIB・TEMを組み合わせ、破面の微視的な結晶学を3次元的に明らかにする手法を確立を確立し、水素が転位運動に及ぼす影響に基づいて水素脆性擬へき開破壊という破壊のメカニズムを解明することに成功した。
右図は、マルテンサイト鋼の旧オーステナイト粒界における偏析炭素濃度を簡便な熱処理によって増加させることで粒界破壊を抑制し、強度を低下させることなく耐水素脆化特性を向上させることに成功した例である。炭素によって粒界凝集エネルギーが増加するとともに、水素の粒界集積が抑制されたものと考えられる。炭素の偏析を用いて水素脆化特性向上に成功した初の例であり、材料強度と耐水素脆化特性のトレードオフ関係を打ち破るための鉄鋼材料設計指針となることが期待される。
現在、破壊起点(粒界)における局所応力・局所ひずみの定量評価手法確立、および、不均一変形の制御による水素脆化特性向上の開発に取り組んでいる。
まとめ
「転位」「粒界偏析」「不均一変形挙動」といったナノ・ミクロスケールの現象を理解することで、破断応力や破壊靭性などのマクロな特性を制御することに取り組んできた。このようなトランススケールな現象理解・材料開発を様々な破壊現象に対して展開していくことで、あらゆる破壊現象における金属材料の耐久限度を限りなく引張強度に近づけるための材料設計指針を構築していきたい。