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研究内容

Keywords

状態図、臨界現象、高温超伝導

出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。

口頭発表
    その他の文献

      所属学会

      日本物理学会

      ナノアーキテクトニクス材料研究センター
      タイトル

      相転移の効率的モンテカルロ解析:クラスター非平衡緩和法

      キーワード

      相転移,モンテカルロ法,クラスター更新法,非平衡緩和法,スケーリング,量子効果,不純物効果

      概要

      磁性体の平衡状態を数値的に調べる手法としてモンテカルロ法は有力だが、相転移点の近傍では緩和が遅くなり、大きな系が扱いにくい。この困難を、大域的な状態更新で緩和を加速して解決したのがクラスター更新法、平衡化前の初期緩和の振舞から相転移の情報を取り出して解決したのが非平衡緩和法である。両者を融合すれば最強の手法が得られるはずだというナイーヴな発想を形にしたのが我々の「クラスター非平衡緩和法」であり、この手法は量子効果の強い系や不純物を含む系にも拡張できる。この手法で不純物を含む系を扱うと、不純物サンプルに関する平均が平衡状態計算における長時間平均の役割も兼ねるため、平衡状態計算と比べて特に効率的である。

      新規性・独創性

      相転移のモンテカルロ計算で効率的とされてきたふたつの手法を融合した、「最強の手法」である
      強力な分扱いは難しいが、スケーリング解析を工夫して平衡状態計算と同様に扱えるようになった
      転移点直上のデータも転移点から離れたデータも扱え、両方合わせると相転移の全情報が得られる
      量子効果の強い系も扱える(むしろ、量子系を非平衡緩和法で誤差なく扱えるのはこの枠組だけ)
      不純物効果には特に効率的(平衡状態計算では二重の平均が必要だが、この手法では一重で済む)

      内容

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      クラスター更新法の転移点における緩和の関数型を調べ、一般的な冪的緩和ではなく引き伸ばされた指数緩和になることを見出して非平衡緩和法と融合した。この関数型は扱いにくいが、初期緩和と平衡状態をつなぐ非平衡-平衡スケーリングを提唱し、平衡状態計算の有限サイズスケーリングと同様の手続きで緩和データを扱えるようにした。左図は等方的スピン系の模型である3次元ハイゼンベルクモデルの帯磁率の転移点におけるスケーリング解析で、転移点と規格化された臨界指数が精度良く得られた。この手法を転移点から離れた緩和データに拡張したのが温度スケーリングである。同モデルの帯磁率をスケーリング解析したのが右図で、左図の転移点を用いて生の臨界指数が精度良く得られた。量子系の平衡状態のモンテカルロ計算は近似的に古典系に射影して行うが、クラスター更新法を用いると厳密な射影が可能になる。従って、非平衡緩和法で量子系を誤差なく扱うには本手法が不可欠である。平衡状態計算では平衡化後の長時間平均で計算精度を上げるが、本手法では乱数列平均で計算精度を上げる。平衡状態計算で不純物効果を扱う際はさらに不純物サンプル平均が必要だが、本手法では不純物平均が乱数列平均の役割を兼ね、二重の平均は不要で計算の手間は不純物を含まない系と同等になる。

      まとめ

      相転移のモンテカルロ計算で効率的とされてきたクラスター更新法と非平衡緩和法を融合した、「最強の手法」を開発した
      非平衡緩和で量子系を誤差なく扱うには不可欠であり、不純物を含む系も含まない系と同等の手間で扱えるので非常に効率的
      一般的手法だが適用限界はあり、その範囲にモデル化を落とし込む/その範囲で興味深い物質・材料を探すことが今後の課題

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