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研究内容

所属学会

日本金属学会, 日本鉄鋼協会

構造材料研究センター
タイトル

金属積層造形プロセスにおける熱履歴の予測と最適化

キーワード

金属積層造形,有限要素熱解析,プロセスモニタリング,微細組織制御

概要

金属積層造形法のひとつであるレーザ粉末床溶融結合法(Laser Powder Bed Fusion, L-PBF)は、高出力レーザでプラットフォーム上に敷いた金属粉末層を選択的に溶融・凝固させ、1層ずつ積層することで任意形状部材を造形する。航空宇宙分野では、タービンブレードや熱交換器などをLPBFで製造した事例が多数報告されている。本研究では、L-PBFにおける熱履歴を大きく変えることを目的として、基材への伝熱を抑制する形状を設計し、ニッケル基合金材の高温保持積層造形を実施した。赤外線カメラを用いたモニタリングおよび有限要素熱解析により、従来の造形よりもはるかに高温で保持しながらの造形に成功し、結果として微細組織や力学特性も大きく変えることが可能となった。

新規性・独創性

L-PBFプロセス中の抜熱に着目し、基材への伝熱を抑制する形状を設計。予熱機構を使わずに700℃以上の高温で保持しながらの造形に成功。
マルチスケール熱解析により、伝熱抑制形状を用いることで冷却速度が従来よりも3桁低下することを検証。
伝熱抑制形状による高温保持造形で結晶粒が粗大化し、硬さが低下。試料形状は熱履歴・微細組織・材料特性に影響する重要な因子である。

内容

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ニッケル基合金Hastelloy Xをモデル材料としてLPBFプロセス中の熱履歴を、試料形状により意図的に変化させることに成功した。赤外線カメラを用いた温度場モニタリングと有限要素法によるパートスケール熱解析の結果、レーザ照射で与えられた熱が基材へと伝わるのを試料形状によって抑制することで、LPBF装置の予熱機構を用いることなく試料温度が1000℃以上に上昇し、3時間以上ものあいだ700℃以上に保持された。また、マルチトラック熱解析により、温度勾配と凝固速度がともに1桁以上低下し、冷却速度が3桁低下することが明らかとなった。単純な円柱形状の場合と比較すると、伝熱抑制形状試料では、造形方向に伸びる結晶粒が粗大化し、亜結晶粒のセル幅が厚く、炭化物の析出が多く、硬さが低下していた。これらの結果から、温度勾配と凝固速度、微細組織の相関関係から凝固マップを作成し、凝固組織形成における高温保持の影響が明らかとなった。

まとめ

LPBFの長所は任意形状部材を造形できることだが、一方で上記のように形状自体が熱履歴や微細組織、力学特性に少なからず影響することは、造形製品の信頼性の観点では必ずしも好ましいとは言えない。したがって、目的に応じた材料特性を保証するための熱解析やモニタリングに基づいたプロセスパラメータ制御が不可欠である。

この機能は所内限定です。
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