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Research Center for Macromolecules and Biomaterials
Title

ドープフリー高機能性有機電子材料の開発

Keywords

機能性有機材料,有機金属,高移動度有機材料,有機熱電材料,伝導性有機薄膜

Overview

有機エレクトロニクスは次世代IT社会における幅広い貢献が期待されている。現在、分子設計および結晶工学を駆使して分子間相互作用を精密に制御することにより、電子物性を操ることが可能となりつつある。これまでに、自身の開発した電荷制御のためのプロトン欠陥を導入した新しい原理に基づいて、高い化学的安定性を有する様々な高機能性有機電子材料の創製を実現している。ドープフリー有機電子材料が拓く新しい高機能性有機エレクトロニクスを多角的に展開している。

Novelty and originality

ドープフリー高伝導性有機材料の合目的設計
ニーズに合わせた電子機能設計
分子設計によるモルフォロジー制御
π軌道エンジニアリングによる高移動度有機材料設計

Details

閉殻構造を有する安定な有機物は元来絶縁体であるため、荷電キャリアを発生するために、これまで複数の分子を「混合(ドープ)」して電荷移動させる必要があった。一方で、プロトン欠陥とπ軌道の非局在化を導入した分子設計により、奇電子を有する開殻分子(双性イオンラジカル)はドープすることなく化学的に安定なキャリアを獲得できる。さらに、その分子に「半導体」または「金属」特性を合目的に付与するためには、分子上の電子が受けるオンサイトクーロン反発(U)と重なり積分(W)を結晶中でのπ軌道の重なり様式によって制御することにより実現できる。この2段階の分子設計指針により、化学的に安定な有機半導体から有機金属までを自在に創製することが可能になった。

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これまで、軽元素からなる純有機物では、電荷移動錯体または伝導性高分子と言った2種以上の混合物でしか金属伝導性が実現しなかった。ところが、プロトン欠陥法によって設計された拡張テトラチアフルバレンジカルボン酸(TED)は、常圧条件で初めて金属伝導性を示す分子となった。ここでは、2方向におけるπ軌道の効果的な重なり様式によりU W が達成され、二次元的なフェルミ面が構築される。層状単結晶の面内方向は室温で2300 S/cmと有機物でトップクラスの高い伝導性を示している。また空気中で数ヶ月経過しても高い伝導性を保持する。透明電極を始めとした様々な応用用途が期待されている。

Summary

有機電子材料の化学的安定性は実用化において重要な要素であり、プロトン欠陥を導入した分子設計によるドープフリー有機電子材料は大気下で数ヶ月経過しても高い電子機能を保ち、極めて有効な設計指針であることを実証した。また、既存有機材料の枠組みを超えた新しい電子物性の発現が次々に開拓されており、この高機能性を活かした新規デバイス開発への展開が期待される。

この機能は所内限定です。
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