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- 305-0044 茨城県つくば市並木1-1 [アクセス]
研究内容
- Keywords
多価金属電池、材料化学、結晶構造解析
出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。
所属学会
電気化学会, 日本セラミックス協会, 軽金属学会
エネルギー・環境材料研究センター
タイトル
多価金属電池の創製に資する正極設計
キーワード
多価金属電池、無機材料合成、結晶構造解析、ナノ材料
概要
近年、国際情勢の不安定化や資源制約を背景に、希少金属への依存を低減し、資源豊富で安定供給が可能な元素を活用した次世代蓄電池の開発が強く求められている。その有力な候補として、資源量が豊富で低い酸化還元電位を有するMgやCaを金属負極に用いた多価金属電池が注目されている。これらは、高い安全性とエネルギー密度を両立する可能性を秘めている一方、研究開発は依然として個別の要素材料の検討段階にあり、実用的な電池セルの確立には多くの課題が残されている。特に正極材料では、多価イオンと結晶格子中のアニオンとの強い静電相互作用が固体内でのイオン移動を阻害することから、結晶構造の安定性を維持しながら、可逆的かつ高速なイオン輸送を実現することが重要な課題となっている。こうした課題に対し、結晶構造の安定性、固体内イオン輸送、材料のモルフォロジー制御を鍵として、多価イオンの可逆的かつ高速な挿入脱離を可能にする正極材料の設計・開発に取り組んでいる。無機材料合成に加え、放射光計測や計算科学を駆使した多角的な構造解析を通じて、結晶構造と電気化学特性の相関を解明し、高性能な多価金属電池の創製を目指す。
新規性・独創性
・酸化物正極材料の極小ナノ粒子化により室温で多価金属電池動作に成功
・多価イオンの可逆的脱挿入を可能にする酸化物フレームワークの開発
・詳細な結晶構造解析により結晶骨格の堅牢性とイオン拡散経路の柔軟性の両立が多価イオン拡散の重要因子であることを発見
内容
トンネル構造型MnO2は、計算科学や高温での電気化学試験を通じて、多価金属電池の有望な正極材料として期待されてきた。しかし、多価イオンの固体内拡散が遅いことから、室温での十分な電池性能の発現が課題となっている。そこで、イオン拡散距離の短縮によって固体内拡散の影響を低減することを目指し、材料の極小ナノ粒子化に着目した。新規開発したアルコール溶液法により、従来困難であったシングルナノメートルサイズの結晶性MnO2の合成に成功した。得られた極小ナノMnO2を正極に用いることで、室温における多価金属電池の動作を実証し、高い容量と出力特性を達成した。さらに、詳細な構造解析から、Mnに対して約0.3当量のCaイオンが可逆的に挿入脱離できることを明らかにし、Ca金属電池用正極材料としての有望性を示した。また、開発した極小ナノMnO2は、多価金属電池の正極材料にとどまらず、触媒やセンサーなどへの応用も期待され、幅広い分野への波及効果が見込まれる。
より多量の多価イオンの可逆的な挿入脱離を実現するため、幾何学的に安定な六角形トンネル構造を有するh-MoO3材料に着目した。結晶骨格の安定性を維持しながら、ナノ粒子化によって固体内イオン拡散の影響を緩和し、室温での可逆的な充放電反応を実現する材料設計を目指した。合成したMoO3を正極に用いた電気化学評価により、MgおよびCaイオンのいずれも室温で可逆的に挿入脱離できることを実証した。特に、充放電に伴う結晶格子の体積変化は2%未満と極めて小さく、結晶骨格を維持したまま可逆的な充放電反応が進行することを明らかにした。さらに、詳細な結晶構造解析と計算科学を組み合わせることで、堅牢な結晶骨格を維持しながら、局所的なMo–O結合が可逆的に伸縮し、多価イオンの挿入脱離に応答することを見出した。この結果は、結晶骨格の堅牢性と局所結合の柔軟性の両立が多価イオンの可逆的な挿入脱離を実現する重要な因子であることを示しており、多価金属電池における新たな正極材料設計の可能性を拓くものである。
まとめ
結晶構造の安定性、固体内イオン輸送、材料のモルフォロジー制御をキーワードとして、無機材料合成と精密な結晶構造解析、計算科学を融合することで、高性能な多価金属電池正極材料の創製を目指す。さらに、材料合成を基盤とした研究を通じて、幅広い材料系に展開可能な新規材料の開発と、その基礎となる材料科学の開拓に取り組む。
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