学生受け入れ中
外部併任先
- 名古屋工業大学 連携大学院教授
研究内容
- Keywords
自己集積、コロイド結晶、構造色、フォトニック結晶、ナノフォトニクス
粒子径の揃ったコロイド粒子は、機能性光学材料を構築するための基本構成要素(building blocks)として広く利用されている。溶媒中に分散したコロイド粒子は、蒸発誘起集積過程において静電相互作用、毛管力およびファンデルワールス力などを駆動力として自己組織化し、長距離秩序を有するコロイド結晶を形成する。形成されるコロイド結晶は、粒子間距離を維持して配列する非接触型コロイド結晶と、粒子が最密充填構造を形成する近接充填型コロイド結晶に大別される。これらは粒子径、粒子間距離、および屈折率コントラストに応じて異なる光学特性を示す。 コロイド結晶は光波長と同程度の周期構造を有することから、ブラッグ回折に基づく選択反射、ストップバンドギャップ(SBG)、さらにはフォトニックバンドギャップなどの特異な光学機能を発現し、光の伝播や局在化を制御できる。そのため、フォトニック結晶、光学フィルター、センサー、レーザー共振器などの高度光機能デバイスへの応用が期待されている。また、可視光域における選択反射を利用することで、色素を用いない構造色材料としても活用されている。 一方、構造色材料の実用化において課題となる虹彩性を抑制するため、近年では長距離秩序を持たないアモルファス構造あるいはガラス構造を有するコロイド粒子集合体も開発されている。これらは短距離秩序に由来する散乱現象を利用することで、観察角度によらない非虹彩性構造色を実現でき、インク、塗料および化粧品などへの応用が進められている。 本図は、コロイド粒子を出発点として自己組織化により規則構造を形成し、その構造に由来する光学機能を活用して構造色材料およびフォトニック結晶材料へ展開する一連の流れを模式的に示したものである。
図:コロイド自己組織化によるナノフォトニック材料形成の概念
出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。
所属学会
粉体工学会, 高分子学会, 日本セラミックス協会, 日本化学会コロイド界面部会
受賞履歴
- ホソカワ粉体工学財団奨励賞 (2009)
外部資金獲得履歴
- 粉体工学情報センター研究助成 (2024)
- 大倉和親記念財団研究助成 (2024)
- ホソカワ粉体工学振興財団 (2017)
- 池谷科学技術振興財団 (2008)
- 天田金属加工機械振興財団 (2006)
- ホソカワ粉体工学振興財団 (2004)
電子・光機能材料研究センター
Roll-to-Roll(R-to-R)連続コロイド結晶薄膜塗工による歪み可視化シート
懸濁粒子,自己集積,塗工プロセス,R-to-R連続成膜,コロイド結晶,構造色,ブラッグ回折,歪み分布,インフラ検査
概要
粒径の揃ったコロイド粒子が自己集積によって形成するコロイド結晶は、構造色やブラッグ回折に由来する反射ピークを示すことから、光学センサーや環境応答型材料として幅広く研究されている。また、コロイド結晶は一次元フォトニック結晶として機能し、フォトニックバンドギャップによる光状態密度の制御や光の局在化が可能である。この特性を利用して、発光増強、光触媒活性の向上、太陽電池の高効率化、高性能レーザー発振などへの応用が期待されている。
高品質なコロイド結晶の作製には、これまで移流集積に基づく成膜プロセスが広く用いられてきた。しかし、その結晶成長速度は約1 µm/s以下と極めて低く、工業生産を見据えた材料開発においては、成膜に長時間を要することが大きな課題とされている。近年では、コロイド分散液の組成や成膜条件を最適化することで、短時間でコロイド結晶を形成する高速成膜法が報告されている。本研究では、移流集積とは異なるアプローチに基づくコロイド結晶の高速成膜プロセスを開発している。
新規性・独創性
● コロイド結晶の高速成膜を実現(従来法の1万倍以上の成膜速度)
● Roll-to-Rollプロセスによる連続成膜が可能(量産化に適した製造技術)
● 応力や歪みを構造色で可視化する新材料フィルム(変形による構造色変化を視認)
● 特殊な測定機器を用いず、目視によるインフラの歪み・損傷検査が可能
● 本成膜技術はコロイド結晶を利用した他の機能性材料・デバイス製造への展開も可能
内容
【下:R-to-Rコーティングで作製した歪み可視化シート】
(A) 歪み可視化シートの構造模式図。PETシート上に規則配列したPSコロイド粒子からなるコロイド結晶の空隙をPDMSエラストマーで充填した構造を有する。構造色はFCC(111)面におけるブラッグ回折に起因する選択反射によって発現し、変形に伴う面間隔 d111 の圧縮により構造色が変化する。(B) 歪み可視化シートの伸長に伴う構造色変化の様子。PS粒子径(Φ218nm)(C) 反射スペクトルの変化。シートの伸長に伴い、ブラッグ回折に由来する反射ピークが短波長側へシフトする。
【上:コロイド結晶薄膜のRoll-to-Rollコーティング技術(量産化に向けた基盤プロセス)】
A)結晶化プロセスPETシート上に形成したポリスチレン(PS)粒子懸濁液膜が、アルダー相転移により自己組織化・結晶化する過程。コロイド結晶の形成に伴い、構造色が赤色から青色へ連続的に変化する。 PS粒子径(Φ197nm)
B)コロイド結晶薄膜の形成過程コロイド結晶薄膜の乾燥・成膜過程。シート搬送速度は 5 mm s⁻¹。本プロセスは、従来の移流集積法と比較して、4桁(10⁴倍)の成膜速度を実現する。
C)Roll-to-Roll連続成膜によるコロイド結晶薄膜巻き取り後のコロイド結晶薄膜シート。シート長 20 mにわたり連続成膜を達成し、量産化への高い適用性を示した。PS粒子径(Φ218 nm)
まとめ
高品質なコロイド結晶薄膜は、構造色やフォトニック結晶特性を有し、光学センサーや機能性材料への応用が期待されている。一方、従来の移流集積法では成膜速度が低く、量産化が課題であった。本研究では、従来法の1万倍以上の高速成膜とRoll-to-Rollによる連続成膜を実現し、量産可能なコロイド結晶製造技術を開発した。さらに、本技術を応用することで、構造色の変化により歪みを目視検出できる低コストな歪み可視化シートを実現した。本成膜技術は、歪み可視化シートに限らず、さまざまなコロイド結晶材料や光学センシング材料への展開も期待される。




