- Address
- 305-0044 茨城県つくば市並木1-1 [アクセス]
外部併任先
- 東京工業大学 物質・情報卓越教育院/物質理工学院 特定教授
研究内容
- Keywords
マテリアルズインテグレーション、結晶方位制御、圧延・熱処理、電子線後方散乱(EBSD)法
材料科学、計算科学、データ科学を融合し、材料のプロセス、組織、特性、性能の連関を予測する統合型材料開発システムの実現を目指しています。さらには、これを支えるデータプラットフォーム(DPF)の構築にも挑んでいます。統合型材料開発システムと材料DPFによって、物質・材料の研究が加速することを期待しています。 材料の性能は化学組成だけでは決まりません。例えば、航空機エンジンに使用される耐熱ニッケル合金は、化学組成が同じでも、鋳造合金と鍛造合金で、強度や靭性といった材料特性が異なります。製造過程で内部に形成された不均一な構造が、特性を大きく支配するためです。さらには、使用中の繰り返し変形による疲労、高温で長い時間をかけて変形が進行するクリープのように、外的因子が劣化をもたらします。 材料性能に影響を及ぼす内的・外的因子は多岐にわたるため、開発はどうしても試行錯誤的になり、長い時間と費用がかかります。特に、安全を支える構造材料では、寿命に関わる性能をばらつきまで考慮して保証するために、多数回の試験が求められます。 このように複雑な因子が絡む材料開発を加速するためには、従来の材料学の蓄積を十分活かしつつ、新たにデータ科学を導入することで、材料データを有効に活用し、さらには材料を機能からデザインできる方法論を確立することが重要と考えます。
出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。
論文
- Masahiko Demura, Toshihiko Koseki. SIP-Materials Integration Projects. MATERIALS TRANSACTIONS. 61 [11] (2020) 2041-2046 10.2320/matertrans.mt-ma2020003
- Dmitry S. Bulgarevich, Susumu Tsukamoto, Tadashi Kasuya, Masahiko Demura, Makoto Watanabe. Pattern recognition with machine learning on optical microscopy images of typical metallurgical microstructures. Scientific Reports. 8 [1] (2018) 10.1038/s41598-018-20438-6 Open Access
- Hitoshi Izuno, Masahiko Demura, Masaaki Tabuchi, Yoh-ichi Mototake, Masato Okada. Data-based selection of creep constitutive models for high-Cr heat-resistant steel. Science and Technology of Advanced Materials. 21 [1] (2020) 219-228 10.1080/14686996.2020.1738268 Open Access
会議録
- 出村 雅彦. AIを活用した材料開発における我が国の取り組み. AI and Big Data for Future Development in New Application of Steels. (2018) 25-42
- Noriaki Hirota, Hiroko Nakano, Yoshitaka Fujita, Tomoaki Takeuchi, Kunihiko Tsuchiya, Masahiko Demura, Yoshinao Kobayashi. Effect of dissolved oxygen concentration on dynamic strain aging and stress corrosion cracking of SUS304 stainless steel under high temperature pressurized water. AIP Conference Proceedings. (2024) 10.1063/5.0192888
- Y. Xu, Jun You Yang, Masahiko Demura, Toshiyuki Hirano, Yoshitaka Matsushita, Masahiko Tanaka, Yoshio Katsuya. Catalytic properties of Ni-Al intermetallic nanoparticles fabricated by thermal plasma process. MATERIALS SCIENCE FORUM. (2014) 2040-2045 10.4028/www.scientific.net/msf.783-786.2040
口頭発表
- 出村 雅彦, 門平 卓也. データ駆動材料研究の国際比較:我が国の取り組みと米国の状況. CRDS内セミナー 米国におけるデータ駆動研究の状況について. 2024 招待講演
- DEMURA, Masahiko. Materials DX Platform: NIMS Initiatives. International Workshop on Advanced Materials Science and Nanotechnology (IWAMSN 2024). 2024 招待講演
- 伊津野 仁史, 出村 雅彦, 永田 賢二, 阿部大輔, 鳥形啓輔. 高クリープ寿命探索タンデム型ベイズモデルの現実的な施工条件への展開. 日本金属学会2024年秋期(第175回)講演大会. 2024
その他の文献
- 出村 雅彦, 門平 卓也, 芦野 俊宏. 構造材料データ記述方式設計. SIP統合型材料開発システムによるマテリアル革命研究開発中間成果報告集. (2021) 57-58
- WATANABE, Makoto, MINAMOTO, Satoshi, KADOHIRA, Takuya, ITO, Kaita, DEMURA, Masahiko. Development of Materials Integration System for Structural Materials. Proceedings of 8th Tsukuba International Coatings Symposium. (2018) 22-23
- 出村 雅彦, 榎学. A領域「先端的構造材料・プロセスに対応した逆問題Mi基盤の構築」. SIP統合型材料開発システムによるマテリアル革命研究開発中間成果報告集. (2021) 11-12
所属学会
日本金属学会
受賞履歴
- 日本塑性加工学会新進賞 (2006) (2006)
マテリアル基盤研究センター
マテリアルズインテグレーションによる材料研究DX
計算材料工学,データ駆動,逆問題,産学連携プラットフォーム
概要
高度化する社会課題に対応して迅速に材料開発を進めるために、オープンイノベーションの重要性が認識されつつある。特に、アカデミアの知恵をフル活用できれば、材料イノベーションは加速できる。我々は、マテリアルズインテグレーションという考え方のもと、MIntという材料設計システムを開発してきた。マテリアルズインテグレーションは、材料工学の4要素、プロセス、構造、特性、性能をデジタルで繋いで材料開発を加速するという考え方である。これを具現化したMIntは、計算機シミュレーション、データ駆動手法を組み合わせ、様々な材料課題に対応したワークフローを組み上げることができる。このワークフローが、アカデミアの知恵をデジタルとしたものとしてストックされ、産学によるオープンイノベーションのプラットフォームとなる。
新規性・独創性
● さまざまな材料課題に対応できる柔軟性を有する。
● プロセスから構造、特性、性能を予測する順方向ワークフローを構築することで、欲しい性能から材料・プロセスを最適化する逆問題を解ける。
● アカデミアとの共同研究で得られたツール・予測手法をデジタル化することができ、webアプリケーションとして利用できる。
内容
MIntシステムは材料のプロセス、評価といった実験を計算に置き換えることで試行錯誤の時間とコストを短縮する。入力と出力の関係で記述されていれば、経験式、理論式、計算シミュレーション、機械学習モデル等、あらゆる予測モデルをモジュールとして実装できる。複雑な材料課題も、細かく文節化していくと、汎用性の高いモジュールに還元され、これを組み合わせたワークフローによって、プロセスから構造、特性、性能を予測することができる。順方向のワークフローをAI最適化手法と組み合わせることで逆問題を解くこともできる。MIntには現在、金属構造材料を中心としたモジュール・ワークフローが搭載されているが、アカデミアとの共同研究等で開発することにより、さまざまな材料課題向けの予測モデルを搭載可能である。
まとめ
MIntは、モジュールを組み合わせてワークフローを構成することで、さまざまな材料課題に対して、プロセスから構造、特性、性能を予測する順問題、欲しい性能から最適な材料・プロセスを提案する逆問題を解くことができる汎用の材料設計システムである。企業の材料開発に利用するためには、課題ごとに予測技術を開発してモジュールとして実装する必要がある。