SAMURAI - NIMS Researchers Database

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研究内容

Keywords

生体親和性、多孔質構造、力学強度

出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。

口頭発表

所属学会

日本バイオマテリアル学会, 日本再生医療学会, 高分子学会, Royal Society of Chemistry, Tissue Engineering and Regenerative Medicine International Society, American Institute for Medical and Biological Engineering

高分子・バイオ材料研究センター
タイトル

再生医療のための高分子足場材料の開発

キーワード

再生医療,足場材料,高分子,生体材料,組織再生,がん治療,温熱療法

概要

再生医療のための細胞足場材料には、組織の再生にともなって材料が消失する生体吸収性に加え、臓器・組織としての形態を維持するために必要な力学強度と細胞の接着や増殖、分化などの機能を制御するためのすぐれた細胞親和性も求められる。また、細胞を足場材料にまんべんなく均一に分布させ、機能性組織を再生するためには、足場材料の外表面の空孔が開いていること、空孔が連通していることが必要である。さらに、がん手術後の欠損組織を再生する場合は、組織再生を促進するだけでなく、がんの再発を抑えることもできる多機能性足場材料が望ましい。このようなニーズを満たすため、合成高分子と天然高分子を複合化した複合足場材料、氷を空孔の鋳型に用いて多孔質構造を制御した足場材料、および温熱足場材料を開発した。細胞培養及び動物実験でこれらの足場材料の効果を実証した。

新規性・独創性

連通孔の創出が簡単
強度が高くて生体親和性が高い足場材料の作製が可能
各素材の長所を兼ね備えることが可能
一つの足場材料にいくつの要素技術を集積することが可能
大きな組織の再生が可能
がん治療と組織再生が単一足場材料で実現

内容

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力学強度の高い生体吸収性合成高分子と生体親和性に優れた天然高分子を複合化する手法を開発した。複合化によって、生体吸収性合成高分子の多孔質骨格の空孔や隙間に、コラーゲンやゼラチンなどの天然高分子のマイクロスポンジが形成される。これにより、合成高分子足場材料の細胞親和性が高められる。また、天然高分子の足場材料の強度不足が補われる。この複合化技術でPLGA-コラーゲン複合メッシュやPLGA-コラーゲン複合スポンジなどの複合多孔質足場材料を作製できた。複合多孔質足場材料は高い力学強度と細胞親和性を示した。PLGAのメッシュやスポンジは骨格として複合足場材料に高い力学強度を提供し、足場材料の形状を保持する。他方、コラーゲンやゼラチンのマイクロスポンジは、複合足場材料の細胞親和性を高める役割を担う。これらの高分子複合足場材料を用いて、軟骨細胞や骨芽細胞、間葉系幹細胞、線維芽細胞などを三次元的に培養し、軟骨や骨、皮膚などの組織を再生できた。
足場材料の多孔質構造を制御するために、あらかじめ作製した氷微粒子を新しい氷晶成長の結晶核として利用し、開いた表面空孔を有し、高い気孔率をもち、かつ連通性に優れた多孔質足場材料の作製技術を確立した。この方法を用いて、多孔質構造を制御したコラーゲンやゼラチンなどの多孔質足場材料を作製した。走査電子顕微鏡により、大きな空孔とそれを囲む小さな空孔が観察された。大きな空孔は小さな空孔とつながることによって多孔質足場材料の連通性を高めることができた。これにより、播種した細胞は多孔質足場材料に均一に分布させることができ、より均一な組織を再生できた。また、近赤外光の照射や交流磁場の印加によって発熱するナノ粒子等を導入したがん治療と組織再生の機能を兼備える複合足場材料を開発した。外科手術によるがん治療は広く行われているが、病巣を切除した後も体内にがん細胞が残存している場合がある。また、組織を切除することによって、臓器や体の機能が失われてしまうことがある。これらの問題を解決するために、残存したがん細胞を死滅させるとともに、切除によって欠損した組織を再生できる温熱足場材料を作製した。この温熱足場材料を近赤外光の照射や交流磁場の印加により、局所的に温度が上昇し、足場材料内及び周りのがん細胞を死滅することできた。近赤外光の照射や交流磁場の印加はない場合では、温熱足場材料は幹細胞の増殖を促進し、外科手術で除去した組織の再生を促進することも確認した。

まとめ

生体吸収性をもつ合成高分子、天然高分子、氷微粒子、光熱変換ナノ粒子を用いて、多孔質足場材料の新しい作製方法を開発し、高機能の多孔質足場材料を創出した。これらの足場材料は細胞の機能を制御し、組織再生を誘導すること、がん細胞死滅効果と組織再生促効果を引き出すことができた。

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