SAMURAI - NIMS Researchers Database

HOME > プロフィール > 岡田 和歩

研究内容

出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。

口頭発表

    所属学会

    日本鉄鋼協会, 日本金属学会, 日本機械学会

    受賞履歴

    • 日本鉄鋼協会・澤村論文賞 (2024)
    • 京都大学・吉田研究奨励賞 (2021)

    外部資金獲得履歴

    • 日本鉄鋼協会 第33回 鉄鋼研究振興助成「冷間加工によるパーライト鋼の水素環境下疲労特性の向上に関する検討」 (2024)
    • 科研費・若手研究「マルテンサイト鋼の強度と耐水素脆化特性の相関の局所変形挙動に基づいた理解 」 (2023)
    • JST・戦略的創造研究推進事業(ACT-X)「予疲労変形を用いたき裂発生抑制による高強度鋼の疲労限度向上機構の解明 」 (2023)
    • 池谷科学技術振興財団・単年度研究助成「焼入れままマルテンサイト鋼を用いた強度と耐水素脆化特性の相関の局所変形挙動に基づいた理解 」 (2023)
    • 日本学術振興会特別研究員 (DC1)「中性子線回折や透過電子顕微鏡を用いたBCC鉄の水素脆性破壊のミクロ機構の解明 」 (2019)
    構造材料研究センター
    タイトル

    鉄鋼材料の水素脆性機構解明と耐水素脆性材料開発

    キーワード

    鉄鋼材料,水素脆性破壊,転位,粒界偏析,不均一変形挙動

    概要

    近年、燃費向上を目的とした輸送機器の車体重量軽量化が急務となっており、出来る限り高強度な構造用金属材料を幅広く社会実装することが求められている。材料中に水素が侵入することで材料が脆くなる水素脆化現象は、引張強度上昇とともに顕著になるため、高強度鋼の実用化において大きな障害である。しかし、水素脆性破壊のメカニズムには不明な点が多い。本研究では、水素が変形・破壊挙動に及ぼす影響を「転位」「粒界偏析」「不均一変形挙動」の観点から調べ、水素脆性破壊のメカニズムを明らかにする.これにより、破壊メカニズムを抑制し材料強度と耐水素脆化特性のトレードオフ関係を打ち破るための鉄鋼材料設計指針を確立することを目的とする。

    新規性・独創性

    マルテンサイト鋼とフェライト鋼を比較することで、BCC鋼の本質的水素脆性破壊機構を解明
    SEMによる3次元像構築・FIB・TEMを組み合わせ、破面の微視的な結晶学を3次元的に明らかにする手法を確立
    炭素の粒界偏析による水素脆化の抑制をマルテンサイト鋼で実証

    内容

    image

    左図は、フェライト鋼の変形微視組織発達を中性子回折によって調べ、水素によって刃状転位とらせん転位の存在比率が変化することを実証した例である。さらに、中央図に示すように、透過電子顕微鏡によって転位組織の形態も変化することを発見した。これらの結果から、水素がらせん転位の刃状転位に対する相対的易動度を増加させることを明らかにしている。さらに、SEMによる3次元像構築・FIB・TEMを組み合わせ、破面の微視的な結晶学を3次元的に明らかにする手法を確立を確立し、水素が転位運動に及ぼす影響に基づいて水素脆性擬へき開破壊という破壊のメカニズムを解明することに成功した。
    右図は、マルテンサイト鋼の旧オーステナイト粒界における偏析炭素濃度を簡便な熱処理によって増加させることで粒界破壊を抑制し、強度を低下させることなく耐水素脆化特性を向上させることに成功した例である。炭素によって粒界凝集エネルギーが増加するとともに、水素の粒界集積が抑制されたものと考えられる。炭素の偏析を用いて水素脆化特性向上に成功した初の例であり、材料強度と耐水素脆化特性のトレードオフ関係を打ち破るための鉄鋼材料設計指針となることが期待される。
    現在、破壊起点(粒界)における局所応力・局所ひずみの定量評価手法確立、および、不均一変形の制御による水素脆化特性向上の開発に取り組んでいる。

    まとめ

    「転位」「粒界偏析」「不均一変形挙動」といったナノ・ミクロスケールの現象を理解することで、破断応力や破壊靭性などのマクロな特性を制御することに取り組んできた。このようなトランススケールな現象理解・材料開発を様々な破壊現象に対して展開していくことで、あらゆる破壊現象における金属材料の耐久限度を限りなく引張強度に近づけるための材料設計指針を構築していきたい。

    この機能は所内限定です。
    この機能は所内限定です。

    ▲ページトップへ移動