SAMURAI - NIMS Researchers Database

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研究内容

Keywords

DNA、ナノアレイ、ナノデバイス他

所属学会

日本分析化学会, 日本表面真空学会

エネルギー・環境材料研究センター
タイトル

ヨーグルト中の乳酸菌の1菌体レベル計測

キーワード

乳酸菌,ラマン顕微鏡,原子間力顕微鏡,細胞外多糖

概要

乳酸菌は、ヨーグルトや漬物などの製品に広く含まれ、腸の健康維持に有益な効果をもたらす。これら健康への有益な効果を保証するために、ヨーグルト中に一定数の乳酸菌を含むことが要求される。乳酸菌が分泌する細胞外多糖(EPS)は食品添加物としてのニーズが高く、またヒトへの免疫賦活作用など有用な機能性が報告されており、このような機能を積極的に利用した新しいヨーグルトの開発が近年盛んである。したがって微生物学的および栄養学的品質と製品のコンプライアンスを確保するために、製造会社は煩雑な日常的検査を行っている。ここでは簡単・迅速な市販ヨーグルト中の乳酸菌数計測と乳酸菌産生EPSの可視化技術の開発を行っている。

新規性・独創性

1)ヨーグルト中から簡単・迅速な乳酸菌分離回収技術。
2)画像解析とk-means法による乳酸球菌と桿菌の選択的計測。
3)従来の菌数検査にかかる時間に比べ約1/30に時間短縮。
4)ヨーグルト中で乳酸菌が分泌したEPSの直接可視化技術。

内容

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ヨーグルトは発酵過程で凝集した大量のカゼインミセル凝集体が乳酸菌と共存しており、これが遠心分離や希釈による乳酸菌の回収を妨げる。新たに開発した手法により5-10分程度で、カゼインミセルが取り除かれた乳酸菌水溶液が得られる(図1)。この水溶液の2μLをカバーガラスに滴下・乾燥すると、乳酸球菌と桿菌が明瞭に顕微鏡観察できる。顕微鏡画像の画像解析とk-meansクラスタリングを行うことで、画像中の乳酸球菌と桿菌を選択的菌数計測ができた(図2)。本開発技術は従来の菌数測定法に比べ、約1/30に時間短縮可能であった。また回収乳酸菌水溶液に様々な物質(コンカナバリンA、鉄(III)イオン、金属ナノ粒子、スペルミジン)を加えることで、分泌細胞外多糖を凝集させる事ができた(図3)。この結果個々の乳酸菌より産生したEPSを光学顕微鏡レベルで可視化でき、画像解析より産生したEPSを定量化することもできた。今後は本技術を用いた、日常的なヨーグルトの品質検査と有用なEPSを産生する乳酸菌のスクリーニングに適用し、本プロトコルの標準化を目指す。

まとめ

ヨーグルト中の乳酸菌を1菌体レベルで計測する簡単・迅速な方法を開発した。本開発手法はヨーグルトから乳酸菌を回収する工程、顕微鏡観察、画像解析まで含めて、従来のコロニーカウント法よりも約1/30に短縮可能である。従来のコロニーカウント法に変わる新しい乳酸菌計測プロトコルとして本開発法は期待される。

この機能は所内限定です。
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