HOME > Profile > MIYAZAKI, Hideki
- Address
- 305-0047 1-2-1 Sengen Tsukuba Ibaraki JAPAN [Access]
Research
- Keywords
プラズモニクス, フォトニック結晶, 走査電子顕微鏡(SEM)下マイクロマニピュレーション
PublicationsNIMS affiliated publications since 2004.
Published patent applications
- 光検出器およびその使用方法 (2023)
- 3次元フォトニック結晶およびその製造方法ならびプローブ (2003)
- 反射性塗料・物質およびその塗布・固定方法 (2004)
Society memberships
応用物理学会, 日本光学会, 日本赤外線学会, OPTICA, 日本機械学会, 日本物理学会
Awards
- 第41回レーザー学会業績賞(論文賞) (2017)
- 第14回つくば奨励賞(若手研究者部門) (2004)
- 日本ロボット学会第17回論文賞 (2003)
- Advanced Materials誌, Cover of the Year 2002 (2003)
- 2002年インテリジェント材料フォーラム高木賞 (2002)
Research Center for Electronic and Optical Materials
光アンテナと量子井戸を融合した高感度中赤外検出器
光アンテナ,量子井戸,中赤外光,光検出器,メタマテリアル,メタ表面,ガス計測
Overview
波長5~10 μmの中赤外域には分子固有の吸収や熱放射が現れるため、中赤外光は環境計測やセキュリティに重要である。しかし、これまでの高感度中赤外検出器には、有毒な水銀やカドミウムが必要とされていた。本研究では、低毒性であるものの感度の低い量子井戸赤外検出器を独自の光アンテナ構造と融合することにより、従来の検出器と同等以上の高い感度を実現した。中心波長は量子井戸と光アンテナの設計により自由に選択できるため、本検出器は特定のガスを高感度に検出するセンサに適している。大気計測、農業、医療などへの応用が期待される。
Novelty and originality
● ジグザグ配線での接続により全アンテナの共鳴を維持しつつ大きな電流の取り出しを可能にする独自の光アンテナ構造を考案
● 光アンテナとの融合により、量子井戸の感度を800倍に増大
● 共鳴波長は量子井戸・光アンテナ各部の寸法により自在に設計可能
● 現行検出器と同等かそれ以上の理論限界に迫る高い感度を実証
Details
光アンテナの基本形は、誘電体の上下を金属で挟み込んだ構造である。各部の寸法を適切に選ぶと、光アンテナは特定の波長で共鳴する。本研究では、中赤外光に感度を持ち低毒性なGaAs/AlGaAs量子井戸赤外検出器の上下をAu層で挟み込んだ。こうして量子井戸と融合した光アンテナは、共鳴波長の入射光を選択的に吸い集め、量子井戸の吸収に適した向きに電場を回転し、感度を大きく増強する。さらに、光アンテナをつなぐ配線を適切な長さのジグザグ型に折り曲げて位相を調整することにより、全アンテナの共鳴を維持したまま大きな電流を取り出すことに成功した。(光アンテナを配列したこのような構造は、メタマテリアル、メタ表面とも呼ばれる。)
量子井戸の吸収波長はGaAs/AlGaAs各層の厚さとAl組成により自在に制御できる。光アンテナの共鳴波長をそれと一致させ、さらにジグザグ配線も最適化することにより、量子井戸の感度を800倍増強し、感度 3.3 A/W(波長6.7 μm、78 K)、外部量子効率 61%、検出能3.9×1010 cmHz1/2/Wを実現した。この検出能は従来用いられてきた高感度検出器であるHgCdTe検出器を超えており、理論限界値に迫る値である。感度は特定の波長で鋭いピークを示すので、特定のガスの濃度計測に適している。これまでにNO2(吸収波長6.25 μm)の応答速度1 ms以下での高速濃度測定の実証にも成功している。
Summary
光アンテナと量子井戸を融合することにより、毒性元素を用いずに従来と同等以上の性能を持った高感度中赤外検出器を実現した。中心波長は量子井戸と光アンテナの設計により自由に選択できるため、特定のガスを高感度に検出するセンサに適している。構造のさらなる最適化による動作温度向上、集積化を進め、大気計測、農業、医療などに役立てたい。