研究内容
- Keywords
薄膜電池、固体電池、イオンダイナミクス、NMR、TOF-SIMS
研究紹介
リチウムイオン電池等の電気化学デバイスは、固体中をイオンが拡散することで動作することができます。私たちは、固体電池材料の拡散係数を測定することにより、固体/界面のイオンダイナミクスを解析しています。さらに、薄膜電池や焼結電池をモデルとしたその場測定技術により、固体電池の充放電機構を研究しています。
実験手法
飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)、パルス磁場勾配NMR(PFG-NMR)、パルスレーザー堆積(PLD)、電気化学測定学生募集
最先端の研究を通じて、博士学位を取得できるNIMSジュニア研究員制度があります。博士後期課程で月額約20万円のサポートあり。社会人博士も受け入れています。Figure 1: SIMSイメージングによるリチウム同位体の分布の可視化。同位体プロファイルの変化から、電池材料のリチウム拡散係数を調べることができる。 Figure 2: パルスレーザー堆積法による薄膜電池の作製とその場ラマン分光による正極構造変化の解析。
所属学会
日本固体イオニクス学会, 日本物理学会, 電気化学会
エネルギー・環境材料研究センター
固体電池材料のマルチスケール解析
リチウムイオン電池,薄膜電池,拡散係数,NMR,TOF-SIMS
概要
リチウムイオン電池等の電気化学デバイスは、固体中をイオンが拡散することで動作することができる。固体電解質を利用した固体電池の開発が世界的に活発に行われており、固体内および固体/固体界面の拡散係数やイオンダイナミクスを解析する手法が求められている。私たちは、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)や核磁気共鳴(NMR)を利用して精密なリチウム拡散係数の解析を行う技術開発を進めており、固体電池材料に応用している。さらに、薄膜電池や焼結電池をモデルとしたその場解析技術により、固体電池の充放電機構を研究している。
新規性・独創性
● 同位体拡散とTOF-SIMSによる正極活物質・固体電解質の同位体拡散解析
● パルス磁場勾配NMR法による固体電池材料のリチウム拡散係数の精密測定
● パルスレーザー堆積法による薄膜型固体電池の作製
● その場解析技術の開発と固体電池の充放電による構造変化の検出
● 液相法による固体電池材料の合成と接合プロセスの開発
内容
全固体電池を実現するため、固体中の高速リチウム拡散の機構を解明することが求められている。我々はTOF-SIMSやNMRを用いた新技術により、電池材料中のリチウムイオンの拡散係数を計測している。固体電解質に関しては、6Li同位体をイオン交換法により固体中に拡散させ、同位体比のプロファイルから拡散係数を得ることができる。イオン伝導度と比較して、ハーベン比から拡散機構を議論することが可能となる。混合伝導体であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)等の正極薄膜を利用した同位体拡散測定も可能である。この手法により、LiCoO2の空孔拡散機構や、アンチサイト欠陥を利用した拡散機構が確かめられた。
まとめ
固体中のリチウム拡散係数を測定する手法を確立し、TOF-SIMSイメージングにより界面でのイオン移動を可視化できることを実証した。第一原理計算と実験との連携により、材料探索にも応用可能である。バルクだけでなく、界面や複合体、粒界、ドメイン、異方性拡散を含む系、さらに動作中の電池材料にも展開することで、材料開発に貢献できると期待される。