SAMURAI - NIMS Researchers Database

HOME > プロフィール > 丹所 正孝

研究内容

Keywords

物理化学、無機化学

固体NMRを用いた ・周期表隣接元素を識別した構造解析 ・イオン伝導 ・その他

researchPicture

出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。

口頭発表
    その他の文献

      所属学会

      固体NMR・材料フォーラム, 日本化学会

      マテリアル基盤研究センター
      タイトル

      強磁場固体NMR装置を用いて行う燃料電池材料等の分析

      キーワード

      イオン伝導,周期表隣接元素,ペロブスカイト,構造解析,酸化物,エネルギー材料,環境技術

      概要

      近年、酸化物型燃料電池の材料であるイットリア安定化ジルコニアを超える材料としてBa3MoNbO8.5やその関連化合物が注目されている。鍵となる酸素(O)イオンの動きやすさは、モリブデン(Mo)やニオブ(Nb)周囲の局所的構造が重要だと考えられる(図1)が、周期表で隣り合うMoとNbは通常のエックス線構造解析などでは区別が難しいので同じ物として扱われてきた。特別な工夫と共にNIMSの強磁場固体NMR装置を用いたところ(図2)、NbとMoのNMR結果は明らかに異なり(図3,図4)、酸素移動に重要なMoの酸素5配位の存在が初めて明らかになった (https://doi.org/10.1021/acs.jpcc.2c03429) 。

      新規性・独創性

      酸素イオン伝導の鍵となるMoとNbに着目した構造解析
      実験的な困難さからMoとNbを区別しない構造解析が行われてきた
      エックス線・電子線・中性子線のいずれでもMoとNbの区別は難しい
      NMRでMoとNbの識別は容易だが、通常の市販品での実用レベルのMo観測は困難
      Mo観測のために、強磁場利用・自作プローブ利用・95Moエンリッチを組み合わせて行い、MoとNbの識別に成功した。

      内容

      image

      MoとNbは周期表で隣り合うため、エックス線や電子線での識別が難しい。さらに、中性子の散乱長も近いため、中性子線による識別も困難である。他方、NMRの共鳴周波数は95Moと93Nbで4倍違うので、原理的にはMoとNbの識別にNMRは極めて有効である。
      しかしながら、95Moの実際の測定には困難が伴い、標準的なNMR装置では不十分であることから、多くの工夫を必要とする。具体的には(1)固体NMR用の装置構成であること、(2)低周波用のオプションでは感度不十分なので、低周波用のプローブを特別に用意すること、(3)十分な感度や分解能実現のために通常のNMR装置より強磁場であること、(4)十分な感度のために分光器が新しい事、(5)95Moは天然では濃度が低いため数倍に濃縮したサンプルを使う事、(6)1試料につき1週間のマシンタイムを用意すること、などが必要であり、これらが全て可能な研究機関は、国内においてはNIMS以外にはごく少数であると思われます。
      実験結果はNbとMoで信号が全く異なることが、示された(図3、図4)。93Nbが2つのピークしか示さないのに対し、95Moは4つのピークを支援している。この結果は、酸素5配位構造がMoの方に集中していることを示す。
      結晶中のNbとMoの偏り分布があきらかになったが、酸化物型燃料電池材料を開発する上でこのことが重要であると考えられる。

      まとめ

      注目度のより高いBa7Nb4MoO20についてもNIMSでのNMRによりMoとNbの不均一分布がはっきり現れており (https://doi.org/10.1038/s41467-023-37802-4) 、今後は、組成による違いについて、詳細を明らかにしていきたい。
      他にも、NMR法では、周期表で隣り合うZnとGaとGeを識別した構造解析(光触媒材料)などにも有効である (https://doi.org/10.1021/acs.inorgchem.0c02894) 。

      この機能は所内限定です。
      この機能は所内限定です。

      ▲ページトップへ移動