- Address
- 305-0003 茨城県つくば市桜3-13 [アクセス]
研究内容
- Keywords
光触媒、吸着、第一原理計算
出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。
公開特許出願
- 可視光応答性稀土類化合物光触媒とそれを用いた水素の製造方法及び有害化学物質分解方法 (2003)
- 半導体金属酸化物光触媒およびそれを用いた有害化学物質の分解方法 (2005)
- 亜鉛含有化合物 (2006)
所属学会
日本物理学会, 応用物理学会, 日本化学会
ナノアーキテクトニクス材料研究センター
電子構造とダイナミクスからの不均一システム設計
第一原理,局所密度近似,ハイブリッドファンクショナル,GW,触媒,光触媒,反応メカニズム,材料設計
概要
不均一物質システムの最適化設計は社会ニーズを実現する上で重要な課題である場合が多い。例えば、環境・エネルギー分野で見受けられる、燃料電池、有機分子の改質による水素生成、アンモニアの合成・分解、光による水分解からの水素生成や有害物質の分解、等の反応システムは、反応物質(液体や気体)と触媒物質(固体)で構成される典型的な不均一系であろう。従来、不均一系の最適化は圧倒的に実験的試行錯誤によって実現されることが多かったが、本研究では計算科学的手法で不均一系の本質に根ざした見通しの良い設計指針を確立し、実験的試行錯誤による開発コストを削減しつつ、所望の機能や高活性な不均一システムを予言的に開発することを目的としている。
新規性・独創性
● 電子構造や物質構造を反応分子や触媒物質で別々に検討するのではなく、反応分子と触媒の相互作用を、不均一システム全体を丸ごと大規模シミュレーションすることで理解する。
● 特に、不均一システム全体の電子構造に対する各構成要素の電子構造のマッピングや、表界面での吸着・衝突反応分子の構造変化や触媒表面環境・構造変化等に伴う電子構造変化の詳細検討により、発現機能の起源を明確にすることで求める機能の高性能化を図る。
● 様々な第一原理手法を駆使することで、確度の高い設計指針を得る。
内容
図は、白金助触媒を担持した水分解用光触媒(YVO4)が反応液であるメタノール水溶液に浸されている状態の触媒表面近くの分子・原子の実験環境温度(室温)での運動の様子(A)やそのときのシステムの電子構造の詳細を示したもの(B)、(C)である。(A)ではメタノール分子の白金助触媒上での解離吸着が観測されるなど、不均一系独特の構造が見られる。(B)や(C)ではそういった構造を反映した電子構造が見られるが、例えば、(C)では、非占有準位に、メタノール分子に属していた-OH基から解離したHや、解離吸着して形成された-Pt-CH3構造のHの1s成分の寄与が比較的大きいことが分かり、光励起による水素生成にとってメタノール分子の解離吸着特性が重要な因子であろうと容易に推測される。同様に、水分子からの水素生成についても解離吸着が重要であることが分かっている。不均一系全体の電子構造についてその構成要素の詳細を調べることが不均一システムの最適化設計の指針を得ることに繋がる。不均一システムのダイナミクスと電子構造の詳細を調べることで、これまで、光を利用することで低温域でも高活性な有機分子の水素改質用合金ナノ粒子触媒、ポリマー等を利用した二酸化炭素の光還元用触媒、チタン置換型ハイドロキシアパタイトを利用した有害物質分解用光触媒、金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)を利用した光触媒機能材料等の開発などを行ってきた。今後は、環境・エネルギー分野で、例えば、アンモニアの合成・分解触媒システム、水の電気分解用電極、燃料電池用触媒、電気化学的二酸化炭素還元技術などへの応用を見込んでいる。
まとめ
できるだけ実際に即したシミュレーションモデルを構築し、様々な第一原理手法を駆使することで、高い確度で不均一システムの最適化を図り、開発プロセスにおける実験的試行錯誤コストの削減を目指す。さらに、ありふれた原料を活用した低コストな代替不均一システムの開発にも応用可能な設計技術として期待できる。特に環境・エネルギー分野への応用はエキサイティングであろう。