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研究内容
出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。
所属学会
日本化学会, 日本物理学会
高分子・バイオ材料研究センター
ドープフリー高機能性有機電子材料の開発
機能性有機材料,有機金属,高移動度有機材料,有機熱電材料,伝導性有機薄膜
概要
有機エレクトロニクスは次世代IT社会における幅広い貢献が期待されている。現在、分子設計および結晶工学を駆使して分子間相互作用を精密に制御することにより、電子物性を操ることが可能となりつつある。これまでに、自身の開発した電荷制御のためのプロトン欠陥を導入した新しい原理に基づいて、高い化学的安定性を有する様々な高機能性有機電子材料の創製を実現している。ドープフリー有機電子材料が拓く新しい高機能性有機エレクトロニクスを多角的に展開している。
新規性・独創性
● ドープフリー高伝導性有機材料の合目的設計
● ニーズに合わせた電子機能設計
● 分子設計によるモルフォロジー制御
● π軌道エンジニアリングによる高移動度有機材料設計
内容
閉殻構造を有する安定な有機物は元来絶縁体であるため、荷電キャリアを発生するために、これまで複数の分子を「混合(ドープ)」して電荷移動させる必要があった。一方で、プロトン欠陥とπ軌道の非局在化を導入した分子設計により、奇電子を有する開殻分子(双性イオンラジカル)はドープすることなく化学的に安定なキャリアを獲得できる。さらに、その分子に「半導体」または「金属」特性を合目的に付与するためには、分子上の電子が受けるオンサイトクーロン反発(U)と重なり積分(W)を結晶中でのπ軌道の重なり様式によって制御することにより実現できる。この2段階の分子設計指針により、化学的に安定な有機半導体から有機金属までを自在に創製することが可能になった。
まとめ
有機電子材料の化学的安定性は実用化において重要な要素であり、プロトン欠陥を導入した分子設計によるドープフリー有機電子材料は大気下で数ヶ月経過しても高い電子機能を保ち、極めて有効な設計指針であることを実証した。また、既存有機材料の枠組みを超えた新しい電子物性の発現が次々に開拓されており、この高機能性を活かした新規デバイス開発への展開が期待される。