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研究内容

Keywords

透過電子顕微鏡、温度計測、熱輸送評価、導電性評価、電磁場評価

出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。

口頭発表
    その他の文献

      所属学会

      日本顕微鏡学会, 日本金属学会

      マテリアル基盤研究センター
      タイトル

      電子線パルスを利用したTEM内ナノスケール熱輸送計測法

      キーワード

      透過電子顕微鏡,温度計測,熱伝導率,パルス電子線,温度波,熱電対,熱拡散率,その場観察,TEM,STEM

      概要

      放熱用材料、熱絶縁材料、熱電材料などの高性能化に向けた精密な材料設計やデバイス開発を行うためには、欠陥や界面などの局所領域でフォノンがどのように散乱され、どのくらいの熱抵抗が生じるのかなどを直接観察し、熱輸送時の現象を理解する必要がある。そこで、本研究では、微細構造と同時に熱輸送がナノスケールで直接評価できる透過電子顕微鏡法(TEM)をベースとした新たな熱輸送評価手法の開発を進めている。特に、電子線をパルス化することで、温度波の位相および振幅解析を基にしたTEM試料の定量的な熱拡散率測定や時間分解的なその場温度波観察手法の開発に注力している。

      新規性・独創性

      10-2Kの高い温度分解能をもつ独自のナノ熱電対による温度変化測定を実現
      STEMによるナノスケール熱走査による所望の領域への熱入力が可能
      ナノスケール温度波を利用した熱拡散率測定の実現
      その場観察による温度波の可視化
      従来のTEMによる微細構造・導電性・電磁場観察などとの同時測定が可能

      内容

      image

      本グループが独自に開発を進めてきた従来のSTEM-based thermal analytical microscopy (STAM)法では、収束電子線照射による局所加熱と独自のナノ熱電対を利用した温度計測を組み合わせることで、定常熱伝導状態におけるナノスケール熱輸送評価を実現している。例えば、図に示すような熱伝導性が高いフィラーが低熱伝導性の樹脂中に硬化している放熱用複合材料内において、STAM像(定常熱伝導状態における試料上の電子線加熱位置に応じた熱電対の温度変化分布像)を得ることができ、その温度勾配を基にした、熱輸送経路の解析が可能である。一方で、本手法では、電子線により入力する熱量が試料厚さや材料に依存しているため、それらを考慮した熱伝導性解析が必須であるなど、いくつかの課題があった。
      そこで本研究では、図中の静電シャッターを備えたElectrostatic Dose Modulatorを現有する加速電圧が300 kVのTEM内に導入し、電子線をパルス化することで、TEM試料内に温度波を発生させることに成功した。発生させた温度波の検出は、従来のSTAM法で用いたナノ熱電対による温度計測技術を応用することで可能であり、ロックインアンプにより温度波の位相と振幅を記録することで、入力熱量の大きさに影響を受けない位相計測を基にした定量的なTEM試料の熱拡散率測定が可能な新たな熱輸送評価システム(パルスSTAM法)の開発を進めている。本手法により、従来のSTAM法で課題であった、試料厚さや材料の種類に依存する入力熱量を考慮した解析が不要になるだけでなく、様々な材料の定量的な熱拡散率や界面熱抵抗の測定、さらには温度波の動的観察による定常状態における熱の伝わり方の可視化が可能になる。

      まとめ

      パルス電子線とナノ熱電対を利用した本手法は、温度波の位相評価による定量的な熱拡散率測定や動的な温度波観察が可能になる。本手法を従来のTEMによる微細構造評価手法などと組み合わせることで、熱拡散率や界面熱抵抗などの評価や定常的なナノスケール熱流のその場観察による直感的理解など、熱が関わる各種先端材料や電子・熱デバイスの評価に展開できると考えられる。

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