- Address
- 305-0003 茨城県つくば市桜3-13 [アクセス]
研究内容
- Keywords
超伝導物質 強相関物質 分光
所属学会
日本物理学会
マテリアル基盤研究センター
顕微光電子分光を用いた材料研究
計測,電子状態,光電子分光,顕微,オペランド
概要
電子デバイスの動作を担う電子の状態解析は、デバイス動作の理解の上では不可欠です。特に実働環境における電子のふるまいは製造過程の歩留まりや性能の向上へと寄与することが期待できます。光電子分光は電子状態を直接観測することのできる強力な手法ですが、これまでのところマクロな領域の定常的な測定が主でした。本研究では電子状態の直接観測を可能とする光電子分光を顕微測定およびオペランド測定と組み合わせることで実材料評価につなげることを特徴としています。
新規性・独創性
● 100nmを切る高い空間分解能で状態密度を直接観測
● 走査型ではないため多点同時観測が可能
● オペランド計測
● スピン計測
● 低温計測
内容
電子デバイスは電子を用いているので、その振る舞いを知ることが極めて重要です。その電子のふるまいを知るとても有力な計測手法として光電子分光があります。紫外光を当てて出てくる電子(光電子)を分光することにより、物質内部での電子のふるまいを直接知ることができます。これまではマクロな領域での測定が行われてきましたが、我々は光電子顕微鏡とエネルギー分析器を組み合わせた装置を採用することで、高い空間分解能で光電子分光を行うことができるようになりました。
上図に我々の装置の概要図を示します。試料から出た光電子は光電子顕微鏡と同様の電子レンズ系を経て拡大像となったのち、二重の半球型エネルギー分析器を通してエネルギーフィルタリングを行った後、像のまま検出器へと至ります。このため、我々の装置では走査型顕微測定装置と異なり、多点同時計測が可能です。また、スピンフィルターを備えることにより、多点同時にスピン偏極度の測定も可能としています。下図にあるように、既に100nmを切る空間分解能を達成しています。
例えば半導体製造ラインで出てきた不良素子に対してこれまで光学顕微鏡やSEMのような観察に頼っていた部分に本装置を適用することで不良に至った原因究明に役立つと考えます。また実働デバイスの動作を直接観測することで、性能向上の律速となる要因の同定も期待できます。
まとめ
● 実験室系光電子分光装置において高い空間分解能(100nm以下)による多点同時観測を達成
● 実験室系光電子分光装置において多点同時スピン観測に成功
● オペランド計測化へ向けた改良が進行中