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- 305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1 [アクセス]
研究内容
- Keywords
鋳鉄,耐摩耗,リサイクル
出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。
所属学会
日本金属学会, 日本鋳造工学会
構造材料研究センター
プロセス制御による鋳造材料特性の向上
液相プロセス,鋳造,複合化,機械的性質,素形材
概要
素形材の製造方法として溶解鋳造がある。複雑形状が得られる利点があるが、凝固時の偏析や溶湯と鋳型との反応などが問題になることも多い。そのため凝固過程における基礎的知見を得ることが重要となる。各種分析法を組み合わせ、凝固時の現象を正確に把握できれば、偏析や反応などを考慮することによる新しい材料の創製が期待できる。応用としては鋳造時にセラミクスなどを鋳包むことにより局所的に耐摩耗性を持たせたり、耐高温酸化特性を持たせたりすることができると考えられる。偏析や反応を利用し熱処理などにより材料特性を向上させることを目指すとともに、複合化の観点から鋳型材料など鋳造副資材の活用も検討する。
新規性・独創性
● 熱分析やEPMA、EBSDなどを複合的に利用した凝固組織解析
● 偏析や反応を利用した材料特性の向上
● 他の材料との複合化、鋳包み、鋳型利用、熱処理の最適化による特性向上
● 計算状態図を利用し偏析も考慮した材料開発
● 鋳造副資材の新規利用法の検討
内容
溶解鋳造を利用したプロセスにより、優れた材料特性を持つ素形材の開発を目指す。鋳造材の特徴としては、マクロならびにミクロ偏析が大きいところにある。凝固時に起こる現象を把握することにより、その時の組織形成過程における偏析や反応が理解できる。基本的には、EPMAなどによる元素分布、EBSDなどによる出現相の分布、熱分析による相変態温度の推定を行い、計算状態図を併用しながら、偏析と出現する相の関連やそれらと材料特性の関連を調べる。熱分析では、その冷却時の1次微分を取ることにより凝固過程が詳細に把握できることがわかった。耐疲労合金であるFe-Mn-Ni-Cr-Si合金の鋳造材について、組成分布をEPMAなどで調査し、凝固組織と状態図との関連を調査したところ、適度な濃度分布の揺らぎがある組織において、十分な疲労特性が得られることがわかった。また、EPMAで元素分布の相関を調べることにより凝固モードが判別できることがわかった。そのほか熱処理を中心とした組織改善や、各種セラミックスを鋳包むことによる局所的に耐摩耗性の向上、活性な金属を利用することによる反応を利用した複合化、その他副資材利用プロセスの検討を試みている。
まとめ
熱分析やEPMAなどにより鋳造組織を解析し元素分布の相関を調べることにより、凝固過程に関する知見が得られ、熱処理温度や時間の最適化にも繋がる。さらにマクロ偏析やミクロ偏析が存在する鋳造材料においても優れた材料特性が得られる可能性が示唆できた。計算状態図とも合わせて検討することにより、液相プロセスを利用した素形材の創製方法に新しい展開が期待できる。