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高分子・バイオ材料研究センター
場を利用して動く分子機械の開発
機能性材料,分子,有機合成,表面化学
概要
機械的な動きをする有機分子は,分子機械と言われ,主に均一系有機溶媒中で動く分子機械の研究がなされている.本研究では,分子機械を有機溶媒ではなく,材料内部や材料表面で動かすことを目的とする.有機分子単体では難しい動きを,金属や高分子材料といった異種材料を利用することで実現する.
新規性・独創性
● 有機分子が存在する場との相互作用を加味した分子設計
● 孤立有機分子ではできない分子構造や分子運動の提案
● 場の変化により分子構造や分子運動を制御
内容
本研究は,金属表面や高分子等の異種材料を場として用い,これらと相互作用する分子機械を外部からのエネルギーにより動かす.理論計算により材料表面や材料中にある分子構造を予測し,異種材料との相互作用を考慮した分子機械を設計する.設計した分子を有機合成的手法により合成し,材料と相互作用させる.外的なエネルギーを付与し,分子機械を動かす.分子の変形によるスペクトル変化を測定し,外的なエネルギーの付与によりえられた構造変化の情報を実験により得る.得られた実験結果を分子設計にフィードバックし,分子機械の構造と動きを自在に制御することを目指す.分子機械を動かすためには分子中の単結合周りの回転運動を制御することが鍵である.単結合周りの回転障壁はエネルギーが低く制御が容易でないが,異種材料からなる場を用いることで単結合周りの回転から生じる構造(=配座)を制御する.
本研究対象である分子機械はその配座を検出できるセンサーとしての機能を兼ね備えている.このことから材料中にある分子の配座を検出することが可能である.有機材料の機能物性と分子配座は大きく影響しており,本研究により,環境刺激を受けた材料中の分子配座とその機能物性の関係を明らかにする一助となることが期待される.
まとめ
有機材料の機能性発現には,有機分子の配座や配置といった変化しうる構造の制御が重要である.本研究により,材料中の分子配座の情報を実験的に知ることができ,材料におけるより詳細な構造解析につながると考えられる.社会的要求に対して,本研究は,高分子材料等の機能性材料開発などに展開できる可能性がある.