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研究内容

Keywords

ナノ構造科学 物性I 無機材料・物性

所属学会

日本物理学会

ナノアーキテクトニクス材料研究センター
タイトル

ネットワーク物質の創製と新規物性の探索

キーワード

ネットワーク物質,層状物質,ホウ素,炭素,理論計算

概要

軽元素であるホウ素、炭素は共有結合性を持つため、その化合物は1次元から3次元のネットワーク構造を取りうる。近年は特に層状物質の開発と応用が注目されており、ホウ素、炭素原子を骨格とした多種多様な新規物質の創製を目指している。本研究では主に理論計算を中心として新規物質の合成の可能性や有用な物性の探索を行っている。これまでに、金属炭化物の層状物質MXeneとホウ素炭素からなるグラフェンの複合化合物の構造を明らかにしたり、ホウ素炭素グラフェンのリチウムイオン電池への応用などを提案してきた。今後理論計算を元に実際の物質合成への展開を目指している。

新規性・独創性

ホウ素と炭素の組み合わせによる新規構造
金属原子挿入による電子状態制御
格子間原子による熱物性制御
ネットワーク構造間の吸蔵作用
高い振動数を利用した超伝導物質

内容

image

ホウ素と炭素のネットワーク構造を有する新規物質創製の例として、Sc2B1.1C3.2が挙げられる(図上段)。この物質はBCグラフェンとMXeneの複合物質であり熱力学的に安定である。このような複合物質を人工的に作成する試みはあるが、熱力学的に安定な物質はまれでありホウ素と炭素の組み合わせにより可能になったと考えられる。従来はグラフェン層とMXene層の重なり方及びグラフェン層内のBCの配列の仕方が不明であったが、第一原理計算により詳細な構造が明らかになっている。
層状グラファイト的なBC2にアルカリ金属を挿入した物質を理論的に提案した(図左中段)。挿入量によりフェルミ準位が変化することがわかる(図左下段)。リチウム原子を挿入した場合、インターカレーションポテンシャルは図右中段のようになり、Li1.5BC2までリチウム原子が挿入されることが理論計算により判明した。これは炭素だけからグラファイトよりも多く、リチウムイオン電池のアノードとしての可能性が示された。
上記の物質は超伝導になりうることが理論的に示された。挿入量によりフェルミ準位の位置を調整することができ(図左下段)、それによりフェルミ面状の電子の広がりが変化する(図右下)。フェルミ面がホール状になるとき(M0.5BC2)に超伝導転移温度が約50K ~ 57Kと高くなることが第一原理計算により明らかになった。これはホール軌道が原子間に高い密度を持つため原子振動との結合が強いためである。今後はこの理論計算に基づき物質を実際に合成することと、さらに新しい物質の探索を目標としている。

まとめ

ホウ素、炭素を中心としたネットワーク物質は多様な構造を取り、特に2次元層状物質はリチウムイオン電池の電極、超伝導、キャパシタ、触媒などへの応用が期待される。新規物質探索には計算的手法が有効である。実用化のための今後の問題点として、理論上有望である物質の安定した合成経路の確立が求められる。

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