- Address
- 305-0003 茨城県つくば市桜3-13 [アクセス]
研究内容
- Keywords
核磁気共鳴、超偏極、光ポンピング、強磁場
1: 強磁場固体NMRの開発と物質・材料への応用
2: 光ポンピング法を偏極源とした固体超偏極技術の開発
出版物2004年以降のNIMS所属における研究成果や出版物を表示しています。
所属学会
日本物理学会, 強磁場フォーラム
外部資金獲得履歴
- 科研費基盤B (2023)
- 科研費挑戦的研究(萌芽) (2021)
- 科研費挑戦的研究(萌芽) (2020)
- 科研費挑戦的萌芽研究 (2013)
- 科研費基盤B (2013)
- 科研費基盤C (2008)
- JSTさきがけ (2007)
- 科研費基盤C (2005)
- NEDO先導的産業技術創出事業(若手研究グラント) 5年型 (2002)
マテリアル基盤研究センター
光で核スピンを操る:量子情報処理に向けた制御技術開発
光照射NMR, 光ポンピング, 超偏極, 核スピン制御, 核スピン相互作用, 半導体, 量子メモリー, 量子情報技術
概要
近年、量子コンピューターや量子センサーをはじめとする量子技術の発展に伴い、固体中の原子核スピンが有する極めて長いコヒーレンス時間が注目されている。核スピンは有望な量子メモリー候補であるが、その高い孤立性ゆえに外部から自在に操作することが難しい。本研究では、独自に開発した光照射NMR技術を基盤として、半導体をプラットフォームとする核スピン制御技術の開発を進めている。光ポンピングによる超偏極生成に加え、光励起電子を介して核スピン間に相互作用を誘起し、これを光でオン・オフ/強度制御することに成功した。本技術は半導体材料や光機能材料の物性研究にも応用されており、量子情報から材料科学まで横断する分析基盤として展開している。
新規性・独創性
● 光照射により核スピン間に働く相互作用の強度や到達距離の制御が可能であることを実証。
● 光による超偏極生成と核スピン間相互作用制御を同一の半導体プラットフォーム上で実現。
● 光照射NMRにより量子情報技術から光機能材料研究まで展開可能な実験プラットフォームを構築。
内容
【核スピン量子制御】
量子情報処理においては、量子ビット間で情報をやり取りするための相互作用制御が不可欠である。固体中の核スピンは極めて長いコヒーレンス時間を有するため有望な量子メモリー候補と考えられているが、その高い孤立性ゆえに、相互作用を必要なときにのみ生成・制御する手法はこれまで確立されていなかった。本研究では、半導体中に光照射によって生成される電子に着目し、光照射下での二重共鳴NMR測定を実施した。その結果、光照射時にのみ現れる核スピン間相互作用を発見し、その強さおよび作用範囲が光強度に依存して変化することを明らかにした。さらに、この相互作用が光励起電子によって媒介されることを明らかにするとともに、光の波長や強度の調整によって相互作用の大きさを任意に制御できることを実証した。この技術は、光によってスピン系の相互作用を自在に設計する「ハミルトニアンエンジニアリング」の一例として位置づけられる。電子スピン系と核スピン系を光で橋渡しするこの制御法は、半導体スピントロニクスや量子物性研究の観点からも新たな知見をもたらすと考えられる。
【光照射NMR技術の開発と応用】
本研究を支える基盤技術として、光照射下で高感度なNMR測定を実現する独自の光照射NMRシステムを開発した。偏波保持光ファイバーを用いて励起光を超伝導磁石内の試料位置まで導光するとともに、極低温から室温まで測定可能な低温プローブを開発することで、安定した光照射NMR測定を実現している。本システムにより、光ポンピングによる核スピン超偏極を利用した微弱信号の高感度検出、多重共鳴NMR測定による相互作用の直接観測、半導体ヘテロ界面の選択的観測に加え、光励起状態や光誘起相転移過程の時間分解観測も可能となった。近年はこの技術を光機能材料にも展開し、光誘起相転移や光応答現象を原子レベル・リアルタイムで捉える分析手法として発展させている。光応答現象を原子核の視点から直接観測できる手法は限られており、本技術は量子技術からエネルギー材料研究まで横断的に貢献しうる基盤技術と位置付けられる。
【参考文献】
[1] A. Goto et al., Nature Communications 2, 378 (2011).
[2] A. Goto et al., npj Quantum Information 8, 59 (2022).
[3] A. Goto et al., Review of Scientific Instruments 77, 093904 (2006).
[4] A. Goto et al., Japanese Journal of Applied Physics 50, 126701 (2011).
まとめ
● 半導体中の光励起電子を媒介として、核スピン間相互作用の光制御を実現。
● 独自の光照射NMR技術により、超偏極生成、多重共鳴NMR、高感度NMR測定を実現。
● 光を用いた核スピン量子ビットの初期化と結合制御の実現可能性を提示。
● 量子メモリー・量子情報技術、半導体評価、光機能材料研究への展開。


